<550>「それもまた部屋、あれもまた部屋」

 こちらを見た。何かを、訴えていた? この表情が、意味を持たずに驚いていた。いやいや、とてもそんなことではないと、私は誰かに伝わることを一番に考えて表情を作っていたことがあるのだろうか。よく見てよ、こちら側に回って、ほら、あれ? これはつまりどこを見ていることになるのだろうか・・・。

 ここは、静かな場所。長く、深く、あくまで本当のことが混乱して、次第々々にぐわんぐわんという音に変わる。不調を、どのようなものとして捉えているだろうか? 足がリズムを持たないまだるっこしさ。この時間は、丁寧だとか波とかいう話を忘れてぼんやりと移るに限る。そうだろう? どうもそう言い聞かせていくような気がした。不調の場所だけ、ゴッソリ除いてしまったらどうなのだろうと思って、それは随分奇妙な風景になることが分かると、大きな回転音とともに弾け続ける笑顔をゆっくりと怖ろしく思った。例えば、投げかけるとき投げかけるものは重要ではなく、その姿勢、ポーズこそが大事な要素になって、また予測しえない次の動きを待っている。歓迎の声をギュギュギュッと絞っていくと、残るのは、場所を構わない明らかなひと間。