<74>「粒はこの水のなかで呼吸する」

 あの人が続かなかったんじゃあない。続けさせやしないという底意地のようなものが蠢いて、ともかくもそれ以外のものとは調和していたのだから。同じ流れを踏む、物語として成立するような生を、それは義務ではない。しかし、何かを激しく揺さぶるらしく、大反発。むろん、横道はある、逃げ道はある。しかし底意地もあそこまで及ぶとは、冷めがたい暗い情熱。ただ揺さぶる、乱す、何を? これから分かる(びっくりした!)、何もないときには揺さぶられていない、そういうことになっている事実。目に見えて揺さぶりをかける外側には敏感、内側は全然揺れていない、もともと、どうして・・・。乱されない何がしかがあるという信じ方、そういうものの窮屈。極力薄くなることは出来そうか、網にすくわれないようなこまいこまい粒、ざらざら。