チョークのように、白い線を地面に残していくのが面白くて、石を拾ってはガリガリと何かを描きつけていたときのことを思い出した。いや、絵だったか? それだけではなくて、文字も書いていた。主に文字だったかもしれない。地面のデコボコにいちいち細かに引っ掛かり、感じたことのないしびれを腕に覚えるのが何とも言えなかった。
「これはねりけしで消せますからね」
幼稚園の授業か。墨? 炭? 黒くボヤボヤとした、乾いた線がキャンバスに浮き上がり、それはねりけしで消せるものであったらしい。何を使って描いていたんだろう。絵を消すということ、また、消すときに使うのが消しゴムではないということがいやに新鮮で、深い緑色をしたねりけしのことばかりが強く印象に残っている。
手で描いて、賞をもらったことがある。ネコの絵だ。確かそんな話を親に聞かされた。昔は手で描いていたのかな、筆より描きやすそうだな、ということなどを思い、ライオンキングを思い出した。手で描く絵のイメージがしにくいのだが、唯一、マントヒヒが、果実か何かで、ライオンの絵を仕立てあげる場面が浮かぶ。あれはまさしく手で描いた絵だ。