生まれてくる確率

 あなたは何億分の、あるいは何兆分の確立を勝ち抜いて生まれてきた云々・・・という話があるが、どうも後出しをされているような気がして腑に落ちない。

 精子のひとつひとつを、その段階でもう個人だとして考えるとすると、その話も正しいのかもしれないが、実際、精子の時点で自意識なるものが芽生えていないと、そんなことを生まれた後に説明されたところで何の感慨も湧かないのではないだろうか。

 精巣にいるとき、後々私になる精子には、個人であるという意識も無ければ、もちろん記憶と呼ばれるようなものも無いだろう。それで、私が私であるということに気が付けるのは、後々私になる精子が選ばれた場合だけであって、その他の場合は、確認するすべもないまま、後々私になるはずだった精子は滅びるだけなのだから、確率、というか、実感としては、1分の1なのではないかとすら思う。