淡々と足を進めることに飽きた私は、近くの公園のベンチに腰かけていた。この季節にしては少し暑いぐらいの昼下がりに、小さな子どもが二、三人集まって遊んでいる。
見ていても、ルールはよく分からない。ただ目一杯に、駈けたりはしゃいだりして何かしらの遊びをそこで行っている。
私はふと、自分の遊びを思った。丁寧に整理、あるいは用意された、秩序的な私の遊びのことを思っていた。
子どものひとりがなおも駈けながら、少し疲れたのか、私の座るベンチの横でふっとしゃがみこんだ。ただそれは、ぐったりしているというのではなく、いつ戻ろうかと目をキラキラさせながら、肉体だけを合理的に休めているといったふうだった。
「ねえ、何を考えて遊んでいるの?」
いきなり声をかけたら怖がるだろうという常識を、好奇心が抑え込む。考えないと遊べないという状態に置かれた私など、軽く超えたところにいる存在だということは知っていながら、何故かこんなことを訊いてみたくなった。
「えっ・・・?」
というような顔をして、子どもは戸惑いをはっきりと私に見せている。しまった。遊びそのものである存在に、余計な隙間を与えた。申し訳ないことをした、とその子のいたところへ顔を向け直すと、もうそこには居らず、駈けだしていってまたさっきの遊びに加わっていた。
「良かった」
私の一言など、ほぼ何の影響も及ぼさなかったことに安心し、ふっと息をつく。
またしばらくベンチでボーっとしていると、目の前の公園の映像を遮り、頭のなかには、過去にあったような無かったような祭りの映像が拡がっていった。どうやら、そこで踊りの一団に加わっている小さい背中は幼いころの私らしかった。
と、幼い私がこっちを振り向き、
「えっ・・・?」
と言わんばかりの視線を私に投げかけている。先の子どもが浮かべた、戸惑いの視線とよく似ていた。
「何故、考えないと遊べないの?」
どちらからともなく、私が私に向かってそう言った。