散漫と没頭と

 私は、散漫と没頭の中間ぐらいの状態をキープすることが苦手である。一度自分の世界に入り、そこで没頭し始めたのなら、しばらくその状態から抜け出したくは無いし、誰かによってその状態を中断させられると、ものすごく不愉快な気持ちになる。

 例えば、本を30分読むと自分の中で決めていた場合に、読み始めて5分くらい経ったところで、

「ちょっとそこにあるもの取ってくれない?」

というような、なんてこともない容易い頼まれごとをされることすら、不愉快なのだ。

 きっと、本を読みながらであっても、頼まれたものを取るぐらいのことは出来ると思うのだが、それでも、本を読んでいるときは、本を読む以外のことはしたくないのだ。

 意識を散漫と没頭の中間ぐらいにおいて、本に集中を向けながらも、頼まれた目的物にもやや意識を向けて・・・というような動きをするのは、私にとって苦痛以外の何物でもない。

 そして、意識を散漫と没頭の中間に保っておけない故か、没頭できそうにない状況(頼まれごとが多くなりそうな状況、やっているのとは別の作業を強いられそうな状況)におかれたときは、徹底的に意識を散漫にすることでしか対処が出来ない。

 つまり、

「ああ、何となく、こちらの作業を中断させられそうな気がする」

と思った場合には、何かに没頭するということを避けるように、あるいは既に没頭している場合、即座に没頭をやめるように、自分を持っていっているのだ。本なども、適当に相手の要求にこたえながら読み進めるということが出来ないから、本読みを中断させられそうだなと感づいたら、声をかけられる前から、本を読むことをやめるようにしている。