kino cinema立川にて。
世界から、全く切り離された場所で。
あまりに静かすぎる、美しく、平穏な場所で。
私はいつまでも生きていくのだろうか。
もうここで一生をほとんど過ごし切ってしまった者。
いつも同じ景色、同じことの繰り返し。
若者のように活発に動き回るでもないが、ここにとどまるか、出て行くか、考えて揺れる者。
旅館をやめて、この村を出て行くとしたら、あなたはどうする?
それらの世代の異なる大人の姿を、黙ってそこに存在する風景を、イヒカは丁寧に見つめてゆく。
将来何にでもなれるし、何でもできるからなあ。
大人たちは言う。
私と、あなたと、歳が違うだけ。同じ人間ではないか。
将来何でもできるって、何だろう。
私には、この場所しかない、というのは。
この場所が一番必要な場所だ、というのは。
いつ定まるのだろう。
完璧にその場に定まりきっているように、子どもからは見える、様々の年代の大人だって、定まった場所から、時々振れそうになる。
もうここに、とても居られたものじゃない。
思い直し、縁側で、音楽のボリュームをあげて、まどろむ。
イヒカには、旅館が必要だ。
しかしイヒカだって、いつ振れるか分からない。
母親は、イヒカを探している。
イヒカは、何事もなかったかのように、あの村の、旅館にすっと戻るのかもしれない。
もう一生、戻らないのかもしれない。
その運命は、一体、いつ決定されるものなのだろうか。