<2573>「『憧れを超えた侍たち』」

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 14年前のイチローさんの決勝打は、間違いなくここに繋がっていた。

 

 そう考えると、今回のWBCの真価が発揮されるのも、ひょっとしたら10年後、20年後のことであるかもしれない。

 

 10年後、20年後の野球の未来を、今ここに、選手たちがこうして打ち立てたのだ。

 

 WBCの熱狂が落ち着いて、6月。この華々しい歩みを記録映像とともに振り返ってきた。

 

 

 栗山監督が、そして中心人物たる大谷選手が共通して持っていたもの。

 まだ誰にも見えていない未来に、強烈な光を当て、そこに輝かしいものをまず築き上げてみる、その想像力。

 築き上げたら、そこに向かってひとつひとつ、丁寧に準備をし、そこに到達できると信じて疑わない精神。

 

 準決勝、メキシコ戦。

 限りなく追い込まれた状況で、大谷選手は、さあこれから楽しいことが始まるよ、とでも言わんばかり、明るい表情で、ナインに向かって準備して、と声を掛ける。

 

 その表情を見ていると、もう、明るい結果が既に出ているかのような錯覚に陥るほどだ。

 

 予言のような表情を、現実が丁寧に裏付け、決勝に進んでからは、全ての現象が、あの、ビッグエンディングに向けて静かに事を進めているようだった。

 

 僕は常に楽しいですよ。

 

 きっと、大谷選手も、トラウト選手も、自分たちがWBCに出たら、あわよくば戦えたら、この大会を最高のものに出来るという確信があったに違いない。

 

 しかし、ここまでのエンディングは予想していなかったに違いない。

 

 下手したら、野球の神様だってここまでのことは出来ないかもしれない。

 

 でも、野球はその場面を用意してしまった。

 

 現実は、人間の想像力に応えてみせた。

 

 

 2023年に、野球の輝きを目撃した人々は、個人差はあれど、きっとこれからも野球を、離さないだろう。

 きっとまたこういう結末に出合えるという想いを、ひょっとしたら生涯失うことはないだろう。