<1945>「霧中の笑み」

 彼は触れた、

 およそ湧いてきたものの、

 それぞれに入り、

 私はまた、違う時日であり得ていた、

 揺らぎのなかの人、

 外で話そう、、

 話すべきなにものも持っていないけれど、、

 どこまで行く、、

 この人が出した声など例えば、

 どこまで行くのか、、

 喜びをその水面から、さらに深く、

 深く沈めて、、

 あたしは立つ、

 泡で一切が過剰になりながら、、

 

 それは、そこにあいた穴として、、

 静かに控える、

 私は、

 この人の、笑みとも何とも言い難いものに、

 まっすぐおりてきて、

 それで、その腹のなかから膨らむ、

 ムクウの音に、

 静かにはりついていました、、

 ボウン、

 ボウン・・・

 私はまた深くする、、

 すすんで引き受ける、苦しみを頼りに、

 その白い、光る線を追い、

 また深くへ、、

 一つの行く日の、

 ひどくけったいな、、

 私は自分の身体に紐を巻きました、、

 どこまできこえているか分からないのだけれども、

 その紐の音、

 身体の音、、

 もっと奥の方、

 全身が溶けてなくなる方まで、、

 足を運んでみませんか、

 

 あるとき女の人が私のそばで

 お前のことも蹴ってやろうか、

 と言いました、、

 そのとき私はつきあげるような振るえを感じた、、

 ええどうぞ、どうぞ蹴ってください

 とは言えなかった、

 ただわたしは黙って、

 この楽しみを私だけのものにしてしまうのだった、、

 像は、

 救いの形をしているから嬉しいのではないのです、

 像は、、

 別のところに入口があり、

 その扉のところで、、

 誰のものともつかない笑みを湛えているから、

 私と同じ顔だ、

 私は嬉しくて、この顔の中へ、入ったことがある、

 と思えるのでした・・・