<1191>「時間はひとりでに照れて」

 見慣れない眺めであると思った。

 どうやらあなたもそうでしょう。

 どこに来ているんでしょう、

 あなた、ここへ置いとくにしても、記憶が多すぎるとそうは思いませんか、

 時間がわたしたちを含みすぎているとは、

 日のように流れているとは思いませんか、、

 時々こうしてひらいにくるとね、

 あんまり突拍子もなくって驚いてしまうことがありますよ、

 ところで何処から来たんです?

 現実から次々に沸いているでしょう?

 不思議だという感慨を持ちませんか、

 一体どうして身振りをするんでしょうね、

 

 次の作法、次の作法へ移っていく人を、

 じっと見詰めていると、

 時間の流れはひとりでに照れてしまって、

 現実をしばらく放擲してしまった、

 半ば嘘の空間にいる、

 これくらいの凝視を、まるで一度も想像していなかったみたいにして、

 どこかへ浮いている、

 おおい、静かにかむされてから長くなりますね、

 やや曖昧な動作で鐘は鳴る、、

 びりびりと鳴る袋のそばで絵的な身振りをする、

 少し濃くなってしまった、

 わたしは自分の濃度に少しだけ照れていた、

 また、そうしてよく息を吐いた、

 途方もなく広い空間に出て、冗談だろうという気持ちを起こしたまま、ただに見詰めるのはやめていた。

 

 あたしが一切なんですからね、

 どこまでもあたしの範囲なんです、、

 ホラ、そこ、あたしの外で本を開いてちゃいけませんよ、、

 さあ呼吸なさい、

 何をそんなにうつむくことがあるんでしょう、

 照りましょうか、

 あんまり静かじゃありませんか、

 運動が大き過ぎてもうあたしはこれを音だとは言えないと思いますけれど、

 ひとりが照れましょうか、

 こんなに強くちゃしょうがないけれども、

 

 しかしただ へそ

 へそに散ずる鈍い光が気になった、

 団欒の不愉快がまた気になっていた、、

 あなた照れているんでしょう、わはははは、と、数限りない声の漏るなかに、

 ひとりさわやかに無目的で駆け出していたいと考えた、

 が、駆け出していた、

 螺髪が無数の鐘となり、次々に鳴り出していて、

 途方もない時間にひとり投げ出さているにはただその場で駆けている必要があると思ったのだ、

 ややうつむき、

 瞳は一切を据えている、

 ここにただのぼやけた揺れだけがある、、