<959>「火を送る」

 たたらたら

 らたたら

 ふいごう ふいごう

 一途な、

 あきらかにばらばらな、

 ばらばらな、

 火の粒は優雅

 あなた

 あなた目掛けた

 それは過去ひといきのいのち

 さわいで溶かしたあの粒の、あのひとりでに

 はだかどうぜんのヒがあなたの鼻先、鼻の先へ、ひとりで踊りあがりやがる

 あがっていやがる

 とすれば・・・

 きみはどう きみはどう きみはどう香る

 あなたの肌のなかにささ、涼しく

 からからと過ぎる からから からからと

 根(ネ)、目掛け、ならう、より、流れ、眺め、ひとの色(イロ)のなか、混じる、混ざる、混じる、

 すみたけ、すみたけ

 スミタケレバ・・・

 澄み、澄み、棲め、

 丁寧にあしさきで触(ふ)る、ふるから、

 あたしはたださだめてもわからない

 大きな声、ひっくり返る

 ひとつでも、ひっくり返る

 ふやけきりたひ、あわいに、あわいにあなたたぐりよせ、られるば

 られるば

 またあへる

 群衆の炊き上げる音にあわされ、あなた

 群衆の炊き上げる風に乗れ、あなた

 あなたひ、

 あなたは火の踊りを看過する

 煙の惑いや濃さを順に数え上げろ

 吸え

 おそらくはひとも粉微塵になりかつてより鮮やかに

 かつてよりさわやかに

 自在を歌う。

 わたしは指揮を取る

 ただのいまの、からっぽの器を前にして、

 ただのからかぜを踏む

 たたらたら

 らたたら

 ふいごう、ふい、ふいごう・・・