<921>「白い煙は、吸われて」

 やわらかい。細かい、息、の在り処。わたしが弾んだ。ひとは目を閉じ、歌っている・・・。

 華やぎの在り処。煙を吸い込んだこと。欠片に笑みの映る、私(わたし)は揺れる、わたしは移る、況は況のこと、呼気の太くなる、吸気は分からない、行方がわたしの表情の上に文字を書いている、鼻がかゆくなる・・・。

 ありふれた色(イロ)にひとりで飲まれ、てゆく。ここは色(イロ)に乗り、色(イロ)でまたカタカタと進んでゆく。

 放られ、また小さく眺め、適当なリズムを思い出し、リズムリズム、ゆるやかにあくび、ひとの顔を借りてあくび、模倣する風と、風と、風と・・・。

 いつの間にわたしの川は流れた。いつの間にわたしは川のなかを流れた。別天地はよく見たことのある、しかし道が分からない。わたしには道が分からない。しかし同じ動きのなかに棲んでいる。形は誰かの肩に手を添えている。音(おと)にされて初めて飛び上がる。溶けてなおよく見ている。

 こすり塗られたものはあんがい、しぶとくここへ残っていた。ひとは染みていた。消えてしまって分からなくなった。割れた、日の朝に、顔は静かに照っていた。なにかひとこえ、なにかひとこえ掛けるのがよいと知る頃に、ちょうどわたしは水を飲んでいるだろう。

 ひとは溺れる。ひとは川が分からないからだ。からだは溶けてしまった。わたしは白く小さな煙になってしまった。誰かが吸っている。別に他の場所という訳もないさ、と言いながら吸っている・・・。