六度目の語り。あなたは口の外(そと)。あなた語るほかないとこころえ、ままよとまぶすひともの。
二日目の朝。私は訳もなくここへ長くいるのだと思う。しかしその外(そと)をゆく人々の震動が、今朝の台所の考えを逸らす。
おらばよい。おらば漏る。ものと言えねども静かに通(かよ)れ。
通(かよ)らしの朝のじたばたしたる騒ぎ、靴裏のきりのなさ。水のと、駆け出しの木、の途方もない長さ、僅かに光る歯。
歯並み、と言えども混合意識のさなかに、きらきらひらりときらめく、またその眼差し、おもいまぶたの真裏にかすかに残る考えやためらい、種々の感情の余韻。
欠けば欠けこの間(あいだ)に、ひねりと、それ見せうれば、欠けたままの裸(ラ)の意識に再び去る。
暮れの意味が隙間から漏る。何故か大騒ぎ、ひどく似合わずにまたそれもいくらかの運動ではあった。小さな相談事のちょうど真中(まなか)を伝ってゆくよう、それと、むつかしい顔ぶれのそこへすっと潜ってゆく。
大胆な顔と互いに行き来を繰り返すことで、帰りの歩行は薄闇のなかで久しく明るい。わざはなし、ためらいは逆に人の背を押して、酔っ払いの態(てい)、ふらふらと歩み出たはいつかの意識の人。意図の感慨。むせた驚き。いつのどなたからか知り得ず誰か彼とかぶさる。一枚、二枚と衣裳、私の袖のなかへあくがれや驚嘆の匂いを連れ戻し、ひとりスス・・・と飾る。あなかげりや。わざとらし、蓋とて持て混ぜて粋なほの煙りの彼方、あなた見よ、そこへほとばしる秀麗な羽織。