火はかぶれた。
私の頭のなかで火がかぶれていた。
時々めいてよくぞその笑み、妖しい日差し。
あなたの微笑みの程度に応じて、かぶれる火、とその中。
くるぶしの叫び、それに似た道。一度も繋がらない大宇宙的な呼吸を絡める。
例えるに音。それも微細な心臓、細かく枝分かれする心臓を躍らせる。
私は名詞を呼吸した。名詞は和やかに割れた。和やかに割れて、枝は粒になる。粒の先に意欲的な目。意欲的な目のその燃え方。大宇宙を静かにただれさすその炎の色。明らかな無音。
まぐその交わす一連の会話。誰もが土に彩られて、また、音がずれた。その姿。その照れ方。30年前の夢に似ている。
私がまだ土から顔を出した頃、不可避の目を想像することがあった。それは感情と微妙にずれ合う、不可思議な熱を放って揺れている。不可避の目、それは燃えていた。あてどもなく愉快でただひとり、木の幹にかじりついて揺れていたのだ。
いつとも知れずそれは雄弁に、味気(アジき)ない夜(よ)のことを語る。10月の感情に溢れた湿っぽいひと粒は、密集したもの波(モノナミ)のなかで、ただひとつの眼差しに相当するものを、腹中に容れたのだ。
足がもつれる。かじれてゆく道にただひとつの湿り気を。わたしのなかにいつまでも映る企みの故郷の話を。