<816>「今生の燃える手つき」

 いびつな色は去る。

 今、個ら、さいわいに積み上がり、うずたかく燃えている。

 あなたは激しい色彩の傍らで暖を取れ。

 火箸を無遠慮に、はらなかへ探る。新しい粉と粉、まで。

 私は例えば重さではない。

 とした・・・。

 身を締めたこと、あくまでその揺らぎの、ただなかに無言は放り出される。

 音枯れの、その飽くまで向こうで、枯れ枝は開く、枯れ枝は弾(はじ)く。

 重さのない匂い。

 私は枯れ枝をぶら下げていた。

 行(ユ)き留まる人々の間(マ)に、軽やかさはついに投げかける。

  あながちぶら下がるのも嘘ではない

 と。と。

 ひからびた屑のなかに指をまぶし、おもむろに嗅ぐ。

 と。

 あでやかさは肉体のその後(ゴ)を示していたのだ。しばらくして、皮膚は振るわれてしまう。

 今日びの軽やかな香り。

 今生の燃える手つき。

 行(ユ)き先にささくれだった手のひら、その甘悲しさ。

 あてどもなく拭われ、それは攫われて、ただそのしぶきの音(ね)を聴いて入(い)る。

 色のない輝き

 色彩のなかの恥ずかしさ

 色臭(イログサ)く行方、は次々に煙(ケブ)る。