<611>「円を描いて」

 超えてきたはずのものが窓に映っている。順番に、ぼんやりと、あれはただ、ふたつとない挨拶で、

「進んだつもりでしょう? ねえ、過ぎたつもりなんでしょう?」

笑い、平静、挑発、大人と言えども帰らねばならない時間に浸透し、さあ、離れていいんですよと表面上は言っている。

 これには怒る。これでもかというほど怒って顔をぴたりと近づけて少しヒヤリ。どの季節にも似合わない冷たさと遠慮がない。このまま一歩、また一歩と退がってしまえばそれで終わりなのだがどうもそうすることが出来ないでいる。何が問題だったのか。今の今まで、問題にもしていなかったことがそうだ。頭をはたいてこのように笑っている。実際には怒るだけで、言ってしまうべきことがないから関係のないことまで次々に招び込んで回転した。回転したての姿勢がこれでは嘘みたいだ。

「適当な対象も、お前を見ていて何と言う?」

何と・・・。