<528>「あまりに生身の手」

 あまりに膨張、あまりに淫ら。その影を眺める者も今はなく、ひしゃげた風景をゆく。なまめかしく、なまめかしく。これではとても、濃密な絡みにはなれまい。

「足であれ、足を使え」

それもそうだが何故か手だ。強制的にスローモーションで、身体の中心線を順々に撫ぜてゆく。あたらあたるらしいポイントで、同時に動く向きと息。

「さあ、もう少し休み休み行ってみようではないか」

これは、では、不断の緊張であったのだろうか。イヤイヤ、という否定の、笑顔のなさ、位置のズレ。同じ部分を残しながら、主な感想はその姿を変える。では、その場を後にした方はと言うと・・・それが眠りなのだ。

「見てください、これが裏側だと言ったら驚くかもしれませんが・・・」

なるほど表情は、制限を超えてなかなかに勝手放題したい放題。どちらからともなくブツブツ言う音が漏れる。これは空か・・・?