<207>「言葉はなに」

 当たり前かどうか分からないが、伝わってほしいと思うこと、その欲望と、実際に伝わってしまうことはまるで違うこと、別のことなのだという気がしている。

「ほら、お前の望んだ通りじゃねえか」

と言われても、何かが違う、しかも決定的に違ってしまっている。これは、わがままなのだろうか。

 何かがうっかり伝わってしまったことにハッとする。まさか伝わるとは思っていなかった・・・からばかりではなく、全く欲していたこととは違うことが起きているという感覚。Aであるということを伝えたいと思う→Aであるということが伝わる、ここにおいて、正確な理解に基づいてAであるということが伝わっていたとしても、扱っている対象であるAの捉え方において、その間に何らのズレがなかったとしても、その初めに内側で渦巻いた欲望と、外に伝わっていくということの間には大きな隔たりがある。内と外、動き方の問題ではなくだ。ひとりでに渦巻いて盛り上がっているものを求め、また、求められているのか。不愉快なものであれば欲さないとは限らない? 責任を放棄した訳ではないところで、こう言うかもしれない、突き動かされただけだと。