点滅

 眠気も大してひどくなく、半ば休憩するような心持ちで布団に入った。枕元にあったラジオの電源を入れ、チャンネルを合わす。今日は、やけにパーソナリティの声が遠く、話も途切れ途切れにしか伝わってこない。

 「眠くないとはいえ、億劫だなあ・・・」

むろん、今日に限って遠くの方で途切れ途切れに喋っていた訳ではない。もう、電池が使えなくなる寸前なのだった。音量のつまみを回すが、さして変わらない。しかし、一度布団に入ってしまった手前、電池交換の為だけに起き出すのは億劫だった。それに、全く点かなくなってしまったのならともかく、途切れ途切れながらも、かすかに伝わってくるのだから、まあこのままでも良いかという気持ちにもなる。

 こんな状態でも、何とかこちらに声を届けていたラジオが、次第に弱っていき、人の声、というよりは、何かエイリアンの叫び声のようなものだけを届けるようになり、また、その意味不明な音さえも徐々にこちらへ届かせられなくなるような始末になった。

 こちらも、眠気がそれほど無かった為か、最初は懸命に断片を拾って楽しんでいたのだが、ラジオから伝わってくるものがだんだんと音声情報の体を成さなくなるにつれ、その混迷と断絶に合わせるかのように、浅い眠りと覚醒の繰り返しへと入っていくようになった。

 ハッと気づいて時計を見る。申し訳程度に、ほんの少しだけ長く眠ったみたいだ。もう、起きなければならない時間にも近かったし、眠気も全くもって無くなっていたので、おもむろに布団から起き上がることにした。

 「電池、交換しようか」

枕元のラジオは、電源の入ったままで消えていた。