「こんなこと、言いたかないんだけどさあ・・・」
と語るその人は、やけに嬉しそうな顔をして、本当は言いたくて仕方がないのを隠しきれないでいた。
本当に言いたかなくて、怒りをただ伝えたいだけなのだったとしたら、事実だけをババっと指摘して2、3秒で済ませてしまえば良い。だがそれをせず、
「延々とネチネチ突っ込めることが見つかったぞお」
と言わんばかりの表情で、その人はほとんど嬉しそうに、怒りをだらだらと垂れ流していた。
それに付き合うつもりも義理もない私は、事実を指摘された箇所だけ、
「すいません」
と返し、それ以外の無駄なネチネチについては、
「この人、今嬉しくて仕方がないんだな」
と、逆にこちらも、内心でニヤニヤしながら適当に応対していた。
そして、話の途切れたタイミングで、いつまでも付き合う必要がないからと、速やかにその場を去った。