どんなに地理的に遠い場所であっても、そこに訪れることが可能なのであれば、そことの精神的な距離は近くなると言えるだろう。訪れる難易度が低い場所(観光地や公共の場など)というのは、たとい地理的な遠さを持っていたとしても、人々の心の中では、
「比較的近い場所」
として認識されるのではないか。
そう考えると、
「別に親しくしている訳でもなし、また、訪れる理由もなく、訪れたからとてすることがない」
隣近所の家の中というのは、訪れる難易度が高いために、かなり遠い場所だと言えるのではないだろうか。
もちろん、地理的に言えば近過ぎるほどに近いが、精神的なことで言えば、遠くの異国に訪れる場所を持つ人はその異国より、地球の外に出たことのある宇宙飛行士なら地球の外側としての宇宙より、隣近所の家の中というのは遠くにある場所のような気がする。
そうすると、何かのタイミングで隣近所の家の中に赴くことになった場合(急な招待でも、何か修理のような頼み事でもよい)、それはどんな長旅よりも長い旅に出会えたことになるのではないだろうか。大袈裟と思われるかもしれないが、その扉一枚の間には、ものさしでは測れない、果てしない距離が潜んでいるように思う。