「校庭で遊ぼうぜ!」
「良いね! サッカーやろうぜ!」
小学校低学年の時分の中休み、校庭に集まって皆でサッカーをするのが、クラスの男子達のお決まりのようなものであった。初めは少人数でやっていたのが、時間が経つにつれ、次第に、
「(遊びに)入れて」
といって仲間の輪に入ってくる友達が増えてきて、私たちはその都度、
「良いよ、○○のチームに入りなよ」
と言って、応えるのであった。
そしてまた、
「(遊びに)入れて」
と声をかけてくる子がいる。例によって私たちは、
「良いよ」
と応えかけようとしたところで、皆、声が止まる。私たちの前に現れたのはクラスの女の子だった。
別に、女の子がサッカーをして遊んではいけないということは無い。それに、小学校低学年の時分で、殊更に性別でもって遊びを分ける必要もないだろう。また、誰もその女の子の参加を不快に思う子はいなかったはずだった。それでも、私たちは一瞬間、返答につまった。
「良いよ、○○のチームに入りなよ」
しかし次の瞬間、すぐに私たちの中の誰かが女の子に声をかけ、私たちもそれに続いた。その後は、一瞬返答につまってしまったことなど、まるですっかりと忘れてしまったかのように、皆サッカーに夢中になって遊んだ。
あのとき、皆、女の子を仲間に入れることに抵抗などなかったはずなのに、何故一瞬、返答につまってしまったのだろうか。きっと、
「女の子には女の子の遊び方がある」
という無意識の内での決めつけが、どこかにあったのかもしれない。でも、そんなこと誰が決めたのだろう。女の子だってサッカーをして遊んでいいはずだ。
男の子であろうが、女の子であろうが、性別という役割でもって遊びを制限される謂れはないはずだ。