弟子が、直接に教えを授かった師匠のレベルを超えてしまうことの例えとして生まれた、
「青は藍より出でて、藍より青し」
ということわざがあります。藍草で染められたものは、鮮やかな青色になることから来ているそうです。
しかし、このことわざはおかしいんじゃないか、あるいは意味を正確に反映できていないんじゃないかと思います。というのも、青が藍より優れている理由として、
「鮮やかだから」
ということが挙げられていますが、色の評価というのは完全に主観であって、
「鮮やかである」
ことを、より優れていると見るか、より優れていないと見るかは、完全に人それぞれですので、色の種類で、やれどっちが上だというように客観的な順位付けをすることは不可能だと思うのです。
「俺は藍の方が好きだよ」
という人だって絶対にいるはずです。そうするとその人にとっては、藍の方が優れているという言い方も出来、その人は、
「藍より青し」
のどこが褒め言葉なのかわからないでしょう。
また、屁理屈を言うようですが、
「青が藍より青い」
というのはただの、事実の指摘であって、
「青の方が優れているんだよ」
ということを、本当はことわざの中で訴えたいはずなのに、そのことはしっかり伝わっていないと思うのです。
くどいようですが、青が藍より優れているかどうかなんて、完全に主観ですから、
「青は藍より鮮やかで、良いですよねえ?」
と、いくら言ったって、
「う~ん、鮮やかなのは確かかもしれないけれど、良いとは別に思わないよ」
と言われてしまえば、誰が見ても青の方が優れた色であろうという仮定は脆くも崩れ去る訳です。色については客観的な優劣がつけられない以上、
「藍より青い」
と言ったって、それは「優れている」ことを示す物言いにはなりません。青は、藍よりも、また他のどんな色よりも、「青い」のは当たり前です。同じ色ですから。