<1701>「宇宙の夜に」

 同じリズムではいないものに、

 とりあえずは声を打とう、、

 とりあえずは緩くなり得るところに、、

 声をかけて、まわろう、、

 まを、

 まを、大きくしたところで、

 大袈裟に打とう、、

 そうした、日常の声に当たり、

 身体に、形式的な宇宙が生まれる、、

 

 私はひそかにそれを見つめた、

 ひそかにそれを見つめて、沈黙して泳いでいた、

 あの、声の波の帰る場所に、

 私も、じわじわと集合していたのだ、、

 どこかから意識が熱を持ち、

 じわじわと出で来てだな、、

 私に直接当たる、、

 どうも、これはよく知られる、惑いのひとつではないか、

 

 ひとつのまとめあげから、そのまとめあげるそばから、

 手の隙間を見つけ、

 土台からはみ出で、、

 あとからあとからこぼれていくのを、

 豊かに違いないものとして、見つめていますよ、

 見つめている空間に、ひとつでいますよ、

 それは流れだから、

 それは嬉しいから、、

 身体を振るいます、

 ことに当たり、続けて振るいます、、

 

 夜のあたたかい風の中で、

 人はどこまでも駆け出して行きます、

 記憶より薄いところで、

 私の分身が踊るのですから、

 それにつられて私も出て来るのですから、、

 いちいちがかけるなかで、、

 夜を過ぎ、

 夜をつかまえながら、、

 途方もなく嬉しい気持ちで、

 どこに行ったらいいか分からない気持ちを、、

 十分にのばしていくまでに時間がかかります、

 

 あの空気と、まったく同じものを、

 違う場所で、

 ここはあの空気ではないと、確認するためだけのように、

 回りました、、

 私は宇宙を持ってさびしく回っていたのです、、

 これは大概の夜でした、、

 私が嗅いだことのあるものも、いくらか含まれていて、、

 特定の、誰かの匂いだと思っていたものが、

 実はその場所の、匂いであったと、、

 駅構内にただぽつんと放り込まれたときに思うのでした、

 私は静かに光を持ちました、それから宇宙を持ちました、、

 きっとこのじわじわとあたたかさの増えるところで眠っていくのです、、

 それからひとつの声をしました、遠方を巻き込んだ声を、そこに置きました・・・、

<1700>「点の記憶、道順もなく」

 全ての音が止まって、

 私の響く音だけが続くところ、、

 通路は暗く、、

 ひとりで、あたたまり、嬉しかった、、

 「私は、どうしてここまで来て、やわらかくなっているのだろう」

 戻って来る人の声を、

 身体にいくつも張り、、

 

 子どもの頃の、

 道順が抜け落ちた、点の記憶、点の旅、

 地名も知らない、

 どこのなんというところなのか、手掛かりがなにもない、、

 そこへぶつかるあてもなく、

 どこかここいらへんだろうなあ、

 という、見当だけつけて、、

 ふらっとそうだと思う方へ、身体を流して行きたい、、

 多分、

 まるで地理的には関係ないだろう部分が、

 あちらこちらでくっついて、

 それはひとつの場所ではないはずだが、、

 

 ある日、なんのきっかけもなく、、

 その場所のひとつに出会い、

 ああ、あ、

 と思うだろうとき、

 はたに人がいてもいい、いなくてもいい、、

 あ、ここは点の記憶のひとつなんですよ、

 どうやって来るのかがまるで分かりませんでした、、

 と言ってみるだろう、

 へえ、とか、はあ、とか、、

 それは困ってしまうだろうこと、

 困ってしまう人の気持ちも分かるから、

 ちょっと私の方でも笑ってしまうだろうこと、、

 

 ある日、私はキャッチボールをしている、、

 相手の放った球が、

 私の頭上を遥かに越え、、

 あ、ごめん、という声を背に、

 転がって行くボールを追いかけている時間は自由だった、

 そんな訳はないのだけれども、

 繁る森や、くさはら、風の中に、

 このまま紛れて、、

 私は長い時間そこで、

 人間でなくなる可能性だってあるぞ、

 と思っていた、

 もちろんこんにちまで人間でなくなることはなかったから、

 それは間違いなんだけれども、

 だからあれは外周からの語りかけだったのかな、

 と思ってみたり思わなかったりする、、

 

 朝、目が覚める、

 どうして私はここにいて、、

 私はまた一日を、ちょぼちょぼ作っていけるのだろうか、、

 そしてまた増えて、、

 私が複数になっていくこと、

 私たち、ではなく、私が複数になっていくこと、、

 光のいりがとても綺麗であることを、思う、、

<1699>「私が生きているのは本当でも嘘でもないと思う」

 あたしは身体を持ち上げて、

 そこへ、置き、進める、、

 どこへ移っているか、分からない、、

 ただ目の前には、移れるだけである、、

 移っていくまま、

 身体のなかで、、うん? と、疑問に思われることもあった、

 

 あ、陽が出てきた、

 という、言葉のなかに住んで、気持ちが良い、、

 このまま、どこかへ移って行きたい、、

 私は、自分以外にはなれないものの、

 常の土地を離れていった、、

 常の土地を離れて、

 しかし手には仕事を携えて行く、

 あたしは呼吸が消えてなくなるほどに静かな、

 ひとつの場所に立って、

 静かにさわぐのをどうすることも出来ない、、

 

 生きていると、こんなところへ出ることがある、、

 どうして、

 あたしは線が方々へのびているのを確かめる機会にたびたびぶつかり、、

 ここへひとつの時間を持っているのじゃない、、

 大枠のなかに、形作っていくものが、

 全て経過により、線になると思えた、、

 これは少しぼうっとするな、

 陽に長い時間当たり、、

 手に携えた仕事がやわらかく、さわりのよいものへ変わったのを、ただなんとなく眺める、

 本当のこと、とはなんだろう、、

 話をするところへ、さあ話をしてください、話すとは、本当に話すとはどういうことですか、と迫られるのに似て、

 本当という言葉が苦手だな、と感じる、

 嘘という言葉も、

 それは嘘だね、本当はね、本当というのはね、などは、排除の響きがして、好きではない、、

 

 私が生きているのは本当でも嘘でもないと思う、、

 不思議だという気持ちが絶えない場所ではある、

 あの、子どもの頃に、

 何日何ヶ月この地域にいたか分からない、友達の家へ行って、

 どうしてあんなに暗がりだったのか、

 どうしてあんなに声を潜めて遊んでいたのか、

 いつ頃、どういったきっかけで家へ帰ったのか、、

 それは誰も憶えていない、、

 上手く家の人に話すことも出来なかったし、

 話そうという気も、起きて来なかった気がする、、

 

 そう、私は、話すことをどこかで遮断されたという意識を持っていたが、

 そうではなく、意図したかどうか、この、話す回路を閉じて、別の面の上へ、

 別の響きを立てようと思いはじめていたという方がどうも、正確なように思える、

 何かが遮られた訳ではない、、

 少し、ひとりでゆく時間が欲しかった、

<1698>「進み増えるごとに」

 いつとはなしに諸方へ、

 明らかなしざまで、、

 明らかなうたいを寄せる、

 寄せられた身体、、

 打つ、ひとりの日、どこまでも接近しました、、

 

 身体を、同じように、、

 私は、どこまでも吹いて、

 どこまでも回転しながら、、

 あれ、どこを歩いているのかしら、

 知らないこともないけれども、、

 記憶してから、そのように見えたことは初めてで、、

 あ、時間によって作られて、、

 物事が見えてくるのかもしれない、、

 

 この日時には、相当数の人が、生きていました、、

 私は平らになった場所で、そのことを、聞きます、、

 長い方途に寄せる、

 それぞれを巻く、、

 そこに時間を置いた、

 身体ごと、順番に、作り出されていると見えて、、

 どこに、どこにいます、、

 私はいつもの通りにそうして、身体を渡しますけれども、、

 その響きはどこへ、

 揺れながら、いかがしよう、、

 中間の火に、、

 戻されて、うたい、、

 またこちらに、見えて、、続かれる、、

 それを、数え、、

 お互いに知る、、

 私は手でつかむ、、

 何事か、裂けてきて、手で掴むも、、

 感触は、数が多く、、

 時間が過ぎれば過ぎるほど、、

 そこからそこからほうけてしまう、

 

 今のそばに外れて、

 もう私は長いこと見えてしまう、、

 長い通りをそのへんにあらわしてしまう、、

 呼吸が、人に知られないほど、綺麗になった、、

 なにをそんな、

 なにをそんなところと思われたまま、、

 いちだ、いちだが、

 徐々に到着し、、

 徐々に荷を積み出し始める、、

 私は、過去のなかから作り出されたのであって、、

 この場所には何事もないと思っている、、

 それなのに、次々にうたう方向が、

 私を見留め、、

 また入ることになる、ことがいくらも、、

 ここに、こんな運動があったの、なんて、、

 言いながら、、

 知らない通りは、知らない呼吸で、

 私を迎えていた、

 是非にも過去に、これをどうぞ、と言う・・・、

<1697>「ひとのさびしさの外に」

 あれは誰?

 私は激しく騒ぎ出すものの、方途の、なかにいる、、

 誰だ誰だ、、

 喚起して、喚起して、

 今そこに生きたものが、、

 

 今そこに生きたものが、

 はげしく掴まって、、

 もののあいだを辛うじて渡っていくのの、、

 姿を、瞬間を眺める、

 いやに今にきこえてくるのじゃないか、、

 あなたはその姿の流れに乗って、

 ここに生きている訳だけれども、、

 ここに生きていながらで諸方の音を集める訳だけれども、、

 諸方の音の騒ぎのなかがわから、、

 ぽっと出てくる訳だけれども、

 

 ひとの、さびしさの、、外に居た、

 それで、何とも言えず、、

 何とも合点を行かせることの出来ず、、

 その場へ、まっすぐに立っているものものの形、

 あ、あたしはそのなかから外れることなく、、

 ひとりで風をあびたままになる、、

 こころもとないこと、、

 歩行が静かになり、

 音も立てず、、

 どこから、どこへ、惑うの、、

 惑いながら、

 そのあたりを、回るの、、

 回転した人々の、

 なかに、このそぶりが、含まれるのを、可能にする訳ではないのだが、、

 冷静に、その通りに舞い、、

 先端へ立って揺れるひと、

 揺れるひと、を外側から眺めるひと、、

 の役割、、

 

 あ、いまにその表情のなかに紛れて、、

 そろそろと、ものの、あたたまってくるところへ、

 出てくる、、

 身体からなにからが、この場へ、含まれてくる、、

 のを、分かれて、きいている、、

 少しの、揺れた隙間から、

 あらわれているに違いがない、

 あ、一枚のひが、揺れて、、

 私のなかへ、落ちた、

 落ちたらば、むやみやたらと染みてくるに違いがないのだ、、

 それぞれの顔、、

 それぞれの高さのこと、

 やたらにそこへ向かうものをきいて、、

 まとめて、手を出だしたらば、 

 その跡にとどまらず、

 見えて、続いてくるものとも言えよう、、

 あ、落ちた、、

 落ちたところから、振動が、二重にも、三重にもなって、、

 こちらへ走ってくるのですから・・・、

<1696>「車両に放られて」

 過ごしていたところをどうもまっすぐに、、使い、

 あとは空白、あとは普通だった、

 どうも似ている、時日に、、

 お互いを容れて、そのまま、喜んでいるの、、

 喜んでいるところを、容れて、、

 電車に乗る、

 車両には、私がひとり、、

 そう、ちょうどこういう時刻では、

 こういう路線では、

 気が付くとひとりでいることが多い、

 車両にひとりで、

 ここにあるもの、ひとつひとつ、ぼうやりしてくる、、

 ぼうやりしてくると、

 この時間には、どうということもないけど、二度とあわないのだな、どうも、と思う、、

 

 ねえ、もう会わなくなる、途端に会わなくなるのに、

 今何も感じていないのが、不思議だと思わない?

 それはまあ、そうだけど、、

 確かに、悲しさが、一度にかたまって、全部になって流れるということが、会わなくなるだろう時間のところでは、起きなくて、

 ここから悲しさが少しずつ始まるだろうことを、

 僅かに感じているだけだった、

 何かは分からないけど、何かがそうして始まり出すときに、

 どうしても、ぼうやりとしざるを得ない、、

 私はあちこちから渡ってきて、過ぎるものに対し、ひとりでぼうとして、背もたれによりかかっているしかない、、

 車両には、私がひとりだった、、

 陽が、必要なだけおそい、

 その必要のなかで遠い、、

 眠ることもかまわない、、

 エネルギーの大きさが、

 身体をだるくしていた、、

 多分、今より若い頃、私はもっとだるさを感じていた、、

 エネルギーが大きいとそうなる、、

 反対にすこぶる元気にもなるものだが、、

 

 その身体はもう少し小さくなり、、

 ただ無容赦にひろい、緑の場所で、

 風に吹きさらされて、、

 ひとりで、浮かぼうとしていた、、

 はらわれて、大部分がこの場所に残ろうとしていた、

 風景は、多くない、、

 ただ、ひろいのだ、

 ここまでひろいと、私はひとりで立っているしかない、、

 どこからか違和も覚えないまま、、

 ここにずっと立ち続けてしまって、

 帰るのも、、

 身体のだるさが増す過程にそっていくことも、忘れられた、、

 しばらく立ち尽くしていることで、、

 足腰の強い、通路を、作ったのかもしれない、、

 なぜって、ここを行くのが容易だから、、

 どこまでも途切れないで、、

 二度と確かめえないところも、、

 あ、ちょっと待て、、

 身体は過程に乗って、だるさよりももっと先へ来てしまった、、

<1695>「同じ場所に声を掛ける」

 そこへ向かう言葉などが、差した、、

 ただ手で払うような振り、、

 時刻を必要としていた、

 同じように、線を引いてきた、つもりであったが、、

 なんだ、これは、、

 どこからどう流れてきたのか、見当も付かない、、

 それ、それ、道の端で、

 小刻みに揺れ、

 小刻みに滑り込んでくるのを、、

 そこに、大仰な形で、見ている、、

 

 生きて、水を吸い、のびていくことは、、

 仕舞いひとつで、

 終わるはずのないことだけれども、、

 あたしが、複数の時刻に立って、

 波により、

 端から端へ、ついたり、離れたりする、、

 その表情が見えますか、、

 どんなき、姿のなかに居ても、

 その表情が、、

 

 私は、剥がれて、

 剥がれて剥がれてを繰り返した、、

 また、剥がれることになるので、

 ぼうやりと、中空のかなたへ目を向ける、、

 目を向けたままでさわがしい、、

 この響きのてあいの、、

 様子が、さらに、さらに、、

 ひろがり、今にし、手を付ける、、

 今から、ほとんど、

 暗いトンネルのなかを、いちどきに歩行するのではなく、、

 一歩が、

 その響きと合う光景を生み出すように、、

 私はそう言っている、、

 

 誰もが、どこかで出会った顔をした、

 人に見え出すのは、

 誰もが、、声のあたりを確かめる模様に同じ波でもって、応えてくるようになるのは、、

 そこで時間が幾層枚も重なり、、

 幾層倍の見え方のなかで、

 はっきりと沈黙しているから、、

 浮き上がってなおその後ろに見えていくのの、

 様子をはっきりと咥えて、、

 黙り込んでいるからなのでした、、

 

 はたして後ろにものが見えたままの、

 様子で生きて、

 こちの方へ、はっきりと、続く、、

 今の私はどこを向いて流れているか、、

 それは静かにして、問わないこととしよう、

 問うたところで、

 私はこの一秒のなかでものをまさぐっているだけだから、、

 この一秒のなかにまさぐるものといえど、

 同じ表情で、

 違う時刻へ、それに、、糸まで全て含んで、、