<1274>「一秒の染め」

 粗くあらわれた日の、、

 粗く、、

 私が眼を持っていくらか待つ、、

 その日の、、なかに、

 一片の発話、

 そのとき断片、 は断片、 と手のひら、、

 いくらも読む、

 いくらも読み込んでいる、、

 

 そっと湧いた過去、

 の、

 ひとつは垂れ方、、

 染色されたものとの行き来のしかた、

 遠い時日に来てしまっている、 ということを、

 一秒に含ませる、

 一秒はそれを、随分吸い込んで、

 ずっしりと、、

 ちょっと、、重くなって、そのはしからまた垂れている、、

 可能だった時日を一秒に映しながら、

 私は遠くの方で音がするんだ、、

 私は遠くの方で音がすると思うんだ、、

 その過去が騒がず ひとりでに生起するということを、

 じっと見つむその目、

 その目のなかにあるありかた、

 そっと揺れっぱなしの、

 揺れっぱなしのを、、

 あたしは方角も知らず眺めていたっていう、

 そのこと、

 そのことをただおもう、、

 映ったものが、 だんだん、、音も立てず、

 クリアー、クリアーに、、

 一秒のなかに静かな染色、、

 私は遠い日にいる、

 いくらも時日をかけないで、、

 その、映るもの、少しは柔らかくなっているだろうか、、

 

 呼ぶおと、、

 誰かから 呼ぶおとが立つ、、

 私は遠い時日にいているので、

 呼ぶおとを、確かに、そっとおもう、、

 それで、 風が少し吹くほうを、ちょっと見ていたりもするようだろうけど、

 どうだろうか、、

 そんなことはふとどこかへ行って、、

 なまみの姿に じかに垂れかかるものに震えを持って、

 こたえる、、

 このはっとして、走り出す瞬間が、

 少しは好きかもしれない、、

 少し走ることで遠い時日が染色されているこの一秒のことが少し好きであると思うのを、、

 なにかはぐらかしたい、

 きっともっと短い時間で、

 ずっと吹いていると思うのだ、、

 身体が、何か、、ちょっと、もう、映し、

 見えるものを、、

 ああ、そう、見えるもの、少し遠いはずだ・・・

<1273>「名前が垂れかかる」

 もう本当にそこにいそうだ、

 もう、ただ、、

 そんな気がした、

 いるというのはどういうことだろう、、

 名前が垂れかかる、、

 それは、 全身を撫でて、、

 わたしにはあんまり量が多い、、

 これは、垂れる、

 

 垂れ続ける運動のなかにいて、見る、、

 見る、

 僅かひとつの名前を、、

 その姿がだんだんクリアーに、、

 お互いが、クリアーに、、

 そうしてそっと挨拶を、、

 わたしはわたしで何か分からないまま、

 あなたは少しだけ分かっていて、

 

 それで、小さな香りがする、、

 私が過ぎてきた季節の、、

 優しい堆積、

 優しい姿、、

 離れない匂いに、そっと日参する、

 日参の、、その空気の切り方、

 沈黙した人々の歩行がひらける、、

 この香りのなかへ上手くまぶされてゆくこと、

 

 遠いリズムを、、

 わたしにはいくらか遠い、、

 それでも見事に跳ねかかる、、

 総体のなかを回転、

 どこまで見えているのだろう、、

 

 私が、仕えて、

 小さな鐘だけをききながら、そっとそこにいた、、

 日参、

 日参の顔に似てきたと、あなたはそう言っていた、

 日参だから、、

 

 あんまり淡いともなんとも言えないで、、

 同じ道を、、

 同じ道をまた歩くこと、

 同じ道をまた歩くことの、、

 ころんで伏せたままになっている身体、、

 それはそれとなくひらわれ、、

 場に居る、

 居た、

 あなたはこんなところに居たんだね、

 それはあんまり地味なもので、、

 見ていても、何か分からない、

 何かを、じっと見ている、、

 どこからか時日がこのために作られてきて、、

 私の、たった一点の集中に、

 見事に沿っていく、、

 空気の嬉しい切れ方、、

 歓ぶ音がして、

 歩くのについてきている・・・

<1272>「小さな模様、小さな時日」

 独自の寸法、

 あ、 生まれています、、

 あ、今、 生まれていて、、

 それで何か、長い距離を、持って、、

 流れて、

 遠路から、遠路へゆきます、、

 それで何かが確認される、、

 それは声なのか、

 それは確認されたままでいます、、

 独自のうめきと、、

 ここからぱっと裂ける、、

 また、何事もなかったかのように集合して、、

 ひとりの言葉へ辿り着くところなど、、

 

 くだけた気持ちがゆき、、

 表面を短い、ふるえがゆき、

 ただに過ぎて、、

 また身体が出来上がっていくのを感ずる、、

 断続的に、

 どこからどこかで出来上がってゆく音をききいれる、

 そのときふるえは来ないし、

 また何の音もせぬけれども、

 うらっかわのありかたは激しかった、、

 驚きの動きだろうと思われている辺りに、

 静かに耳をつけ、

 それでも足らないから、見ている、、

 まったく眠って、見ている、、

 小さな粒から粒からとんと湧き出してくること、、

 それはまったく匂いの想像もつかないけれども、

 どうだろう、、

 全く新しい時日が入ってきて身体のなかで遊び、、

 また戯れな排出によってどこかゆく、

 小さな文様と、

 

 小さな文様と、姿、、

 いわばわたしが ここで空白を眺めていれば、 

 それはどうなのだろう、

 とりすましている時日のなかの黙った顔を、、

 黙った顔の前を、

 わたしの視線は少し遊ぶ、、

 また外に出、外に出、

 流れている、、

 小さな時日を掬い取るかたち、、

 手は、手は、スローモーで、

 いちどだけ全部の身体がその所作のなかに入る、

 いちどだけで、見ている、

 一体どこでこんな身体を拵えるんです、

 明確な音はせぬけれども、、

 不安定に流れていき、、

 ひとつの発話、

 独自の寸法を持ったひとつの発話を、

 わたしはそっと握っています、

 誰が振り、誰が振り、するのか、

 まったく知られず、、

 身振りを立てて、、

 その穴に向けて耳を置いている、、

<1271>「無音の水の中に」

 一切彫り込まれていて、

 瞳も通すわけでなく、、

 全体像が、身体のなかを駆けて、駆けるのでもなく、

 それは、 ひとりで彫り込まれていた、、

 こんなものはどこから来た、

 こんなものはどこから・・・、

 

 奇妙に、微笑みで、

 奇妙に、遊びだった、

 いつしか このかたちだけを取っていたのだ、、

 座った、

 座りの良い、

 なにか、、無音が、無音から始まったような、

 (そんな気配がする・・・)、

 しばらく、無音で、驚いているような、、

 沈潜の人、

 奇妙な出で立ち、、

 水を一身に受けて受けて受け続けて来たような、

 (そんな気持ちがする)、

 それは、それは、

 

 それは、居た、、

 縦横に滑らかな線を置いて、

 居た、、 

 そこには沈潜して無音のひとりがいる、

 この人は駆けて来た訳ではない・・・、

 

 それは、占めた、、

 一切邪魔と思われずに、、

 あれは共通の、ひょっとすると、無音の空間に、

 訳も分からないまま立っている、

 じっさい どんな身振りも伴わずに、

 ひとりで、 微笑みで、、

 微笑みを垂らし、、

 当たり前に占めた、、

 

 きっと、 古い色の、そのまた裏側に、

 ぽんと飴色に光る、、

 それは微笑みによく似合う色だ、、

 輝きを、

 それは日々の中を絶妙にくぐる、

 明らかな声を立てないまま、

 居た、

 一体どこをどう・・・

 どこをどう削り込まれたら、、

 あなたのような無音性はひらく、、

 駆けない、

 

 駆けていない、

 それだから無音の、

 日々の人、、

 身体から時間をかけて垂れていく液を、

 見て、見て、、

 流れているままの、、

 流れたままになる身体、、

 いちど、またいちど、彫り込まれて、、

 黙って座っている、、

<1270>「予感は暗い文字だ」

 予感は暗い文字だ、、

 一挙手一投足の、

 それには静かな色。

 黒、 と映えている、、

 今より暗い文字も、、

 これから生まれ紛れていく必要があった、、

 あなたが身体を振り払ったあとにただ呆然と立たされている一文字の人、

 一文字は希望ではない、、

 一文字は、しかし翳るのでもない、、

 刻印されようとして、、

 

 その一文字の匂い、、

 愉快に生起する一日の横に一文字の匂い、

 だんだん揺れて、、

 だんだん騒ぐと、

 匂い、

 全く、まったくの、

 全身が動揺体なのだ、、

 身体はちょっと先へ振れているのだ、

 

 わたしにはその背後もなければ、正解もない、、

 ただ投げ出され転がっているだけだ、、

 揺れた文字が、、

 ただ目だ、 ひとりのからだの目だ、、

 画面を想う、

 そのひとりの目を、

 刻印しようとして、、

 

 地面へ、地面へ、それはべったりと、

 それはべったりと、動揺体の全体は付着して、、

 付着して、乾いて、、

 なんのきなしに通う人が、

 ぐっとそのなかに入る、

 ぐっとそのなかに紛れる、、

 

 遠いんだろうか、、

 あの人の記憶は遠いんだろうか、、

 もんじがいつも垂れたままになっていて、、

 そのたたずまいとか、

 視線はちょっと名付けようもないものになっていたけど、

 誰なんだろうか、

 一体動揺体のリズムは響くのだろうか、、

 時日をこえて響くのだろうか、

 一文字の人、

 それは立っていた、、

 またそのまま、 激しく合わさる視線のなかを立っていた、、

 ぼくが見ているこの乾いたものから染み切った 時日が垂れ続けてきている、

 垂らしたまま、見ていた、

 この人は文字だ、

 この人は文字だった、、

 それはどういうことだろうか・・・

<1269>「茫」

 あれ、茫。

 あれも、 茫。

 茫‐茫、

 ぼあ(ぼあ(ぼあ・・・(ぼあぼあ(ぼあ・・・、ぼあ、

 茫やら茫、茫やら茫、

 茫と茫

 茫ですね、 ここまでしっかりしているとは思わなんだが、、

 全く、いる場所が、

 これは もう茫ですね茫でしょう、

 どうですか、

 

 見事にです、茫です、、

 流れているものも何か、

 ひとりの夢の辺り、

 茫を携えて、

 全く、 気持ちがよく言はさらさらと、

 茫のなかです、

 

 私には秘密めいたところはないように思う、、

 全部が明らかになってもなおなにか秘密めいたものはないように思う、、

 何か秘密を持っているからこそこの人はあまり秘密量の多くはない人だと言われるというものだろう、、

 あたしはすっかり身体をたくわえている、、

 ほんの少し身振りの方が先に出で、

 知られん、

 知られている、、

 

 茫のなかへ試みに手を入れてごらんなさい、

 茫と茫だから、、

 今や私の手は茫と茫だから、

 それからすっきりとする、

 それから華やぐ、、

 

 あの不明瞭な色の、、

 そのなかの音響、

 思うさま深くへ、、あたしが入ったことは震動、、

 どこかで目をひらいている、、

 全く、言もなしに、

 小さい小さい音がして、粒が立ってきた、

 茫のなかにひとつの鋭さ、、

 全体は、ひとつ鈍い、

 茫でしょう、、

 私が携えていく方がよいものはこれだ、、

 また静まる、、

 漏れたような言葉でただ始まりもなく参加するのだ、、

 これは中心なのか、

 これは辺境なのか、

 傍らに茫とした踊りがあるから拾ってごらんなさい、、

 傍らに衣裳を脱ぎ捨ててあったり、

 茫とするでしょう、、

 小さい記憶が、、

 破片が次々に立ち上がり温度へ向けてさらさらと踊っていた記憶が、、

 からだはまた集まりながら、

 茫のなかにもそっと入るでしょう、、

<1268>「何かの香、来て多層」

 周辺に、幾度も身体は畳み込まれて、

 折られ、、

 破片となったものは、

 軽い身体を携えて、、

 案外自由に、案外すっきりとした面持ちで、

 そこいらに転がっていてもそこいらに転がっているとは思わぬままなのだ、

 

 その不活性と、

 熱が飽くまで穴のようだ と言うこと、

 身体から中身を取られ折り畳まれていく、

 その音をひそかに聴いていたが関心を示そうという訳ではない、

 しかし何か私と関係しないことのようでもない、

 きっと、あとのあとまで微音が残る、、

 それによって驚きはしない、、

 

 身体が剥がれていくのとは反対に音は、音の成分を既にもう失いながらぎゅっと小さくなって何かゆったりとした色となって残る、

 私はそれを掬わないでただ黙って見ている、

 泳がせているのでも、泳がれているのでもなく、、

 何か色がある、

 おそろしいことではない、

 から、、・・・じっと見ている、

 ・・・、

 何で多層、

 絡まり合って、、

 もう飛び出していっても、そこに現実はなくて、

 音の成分を失った音だけが、

 声、声の成分を失った音だけが、、

 こっからぼんやりと、、

 私の 空 目掛けて散じるとしている、

 

 この、散じるものの勢いにふっと、 試みにやらかく指を掛けたりなんぞしていると、

 ばらけてこぼれるぞ、

 であれば私はひそかに聴いているだけである、、

 あの、 ひとりで過ぎた日はかたまったイメージとなったまま、

 遠のかずにじ、、・・・ト、くっついて、

 

 今まさに散じようとするもの、、

 常に破片、 僅かに破片で、

 ひそかに軽くなり、

 音も聞こえないで、、

 今まさにあらわれて過ぎる、、

 飾り立て盛り上がった香りのなかに全身で、 ひとつの空洞で、、

 まさに眠り上げている、、

 そんな、一片の声が私をちょっと通ること、

 滞留して、

 あとはただもっと軽やかになって排泄される、

 こんな時日、

 破片の さらに隅の隅に、

 微かな香があって、、

 それはいくひとをも訪れる、、

 訪問はただに聞こえているのだ、