<902>「野の響きを」

 ふく。よく吹くと、ふる。ひとはただ、肌と、とんでもない速度、を、こえるもの。よく吹くと、身(ミ)、身(ミ)、ながる。ながると、笑う。笑われはまたの夜(よ)、ひとは有りと暮らし・・・。

 うぶな声のまわりに膜、その野(ノ)や、その野(ノ)や、ひといろごとに付け足す。きこえきこえてうち騒いでくる。ぼんやりとして、かげにまたたれか、行(ゆ)き道に小さく待ち、凡庸や、流れ、流れィ、うたれたのと、耳、を、どこまでも耳にする言(こと)を静かにここへ滑らせ、ゴゥと鳴る、ゴゥと鳴る、語りはなおも続く。

 私の等しさのうちに小さな疑問点として、の、ことあるごとのざわめきが、通過する。それは震え、打ち、イ、鳴らすひと、ひとの群れへ、私は通過するものと、しばし旅に出(デ)、デ、出で、いまやふたつの目は一様の世界を結う。

 はたらきかけるこころ、ト、わずかな振り向き、に、慎重なもの、あとは波になり、揺れにゆき、揺れは揺れつつ渦を知り渦を巻き、たれか流れ、たれか涙、たれを背負うとゆく、私はゆくものの音(ね)を聞き、残りの全部を耳に、それから耳へ、ただのほうるへ、響かせた・・・。

 ひといろのわずかなささやき。それはうぶでもない、野(ノ)でもない。あくまでかの響きを勢いでなく(イ、でなく)通過させるもの、それからもの。

 よく紛れ、またよく目の覚めること、いちいちのことは躍動人(じん)、躍動人(じん)の熱心な間合い。間合い間合いはほつれてたれか混沌とするものをゥ、得(エ)、進む・・・。

 振り、ハ、知り、いつでも、緩み、またたれか駆けてゆく。コンと鳴る、コンと鳴るおそらくはただ上(うえ)の、ものを知る顔へ・・・。

<901>「一番簡単な部分まで」

 揃う。ひとのエ、に揃う。ほどほどにし、窓、は前へ向けて、あるいは風、強弱にてらいのない、または肺、の起き上がり、夜(よ)もヒもなくただ指を差すこころ、おどろいて、ざわめきの規模がひろがればひろがるだけ冷静になる。うち、が騒ぐ、私がひとりでないとする、ノ、は、分解されているので、の話、そこに常態、常態をゆるやかに置く。

 たんに手のひらに、ひとつの意味を持った水滴が奇妙ににじんだとして、時間の経つにつれてまたどこかへ、あるいはむさくるしいところへ、二度、文字の点滅を伴っておりてゆく。

 騒ぐ、とは、なにだ。わたしは関係性のなかへ、ふいによだれになって垂れてゆく。わずかに表情を試す、そばから、気、の、すっと横へ逸れてゆく、のゥがある。

 まだかたい。まだてらい。起こること、ある日の猥雑が、わたしを試しているとき。身体(しんたい)がわずかに鐘の音(ね)を通して振るっているとき。まるめつままれた小さなかたまりになっているとき。一番みだらな、歩行可能な部分までおりてゆく。そこで水を飲む。

 あとでふやけてく。ふやけたあとで、自然に身体(からだ)の外を目指している。そのことがよい。その音(おと)がよい。ひとつぶの訴えにまさるものがない。

 余分に、まともな身振りで、たわむれと向かい合い、緊張性のヒをゆっくりと招待する。ただ人(ひと)は歩行に対して驚くことしか出来ない。驚き、以外があるとすれば? 理解? 確認? 私も、という認識・・・?

 ひとひらになるための、いくつもの乱れ、を眺めている・・・。

<900>「風の時刻」

 ひとは照らした・・・。不変は音(おと)、いつもの身(ミ)、ただからんと、カラン、と、した、歩(ホ)、歩(ホ)は様(よう)。

 紛らしさにいつなんどき、昨日や今日や、盛り上がり、芽(メ)、人(ひと)の一枚の姿、形はいわう。また、文言の寄り集まりに、ヒ、を傾けると、遠い、ほこり、ノ、記憶と混じる。

 たれに葉を向けているか。ヒは私の方向へ眼を向けた。限り、ノ、声を、そこいらへ敷く、敷く、と、ふたり。一度目は若葉。ヒ、に、消えてしまいそうな・・・。濃緑は喫茶店の隅の席へ、ザ、を占めている、ト、言(こと)と言(こと)と問いのマに恥ずかしさ、を静かに置いておいた。

 夕(ゆう)へ、ぶれて、未だ、渡らせている。なにを? 不断のねじり、湧き上がり、向こう見ずに跳ねる背を・・・。

 遅れた笑みが彼方へ映るときのゥ、動じ。動じ、テ、触れ、ハ、揺り合い。まだ醒めているものへの橋を、それは温度を訊くのと同じ態度で揺れる、もの、ヲ、見る。

 ひとことがあくびと同じ姿で・・・。ひとことがただの色合いにかまけている横で、不具合の粒を粒と言(ゆ)うなかに確かな響きがある。めまえに空(そら)のくらくらとする・・・。

 無地を覚えかけたそばから、広告の踊る、広告のめまイのなかにいるカノよな、私は凝視、ぎょうし、ぎょうし。震えるほどノ・・・現(げん)に、風景と見えるもの、サキ、サキ、ワ、ワカし、て、出でタ、の、と、嘘・・・は、かく絡む。

 うるう、ト、見た。訳(わけ)は私の下(した)でゆるりゆるり、イ、と、咲く。巻き上げて覗くの、その、ものとは、人(ひと)がからかぜのなかにいだき、泣く、形・・・。

 風はわっ、と染み、ものの姿が過去へと揺らいでゆく・・・。

<899>「根の魔の器」

 なおも回転す。記号は、かき混ぜられたものの姿から、自由になるのでない。よく映す鏡だ。それが枠組みであればあるだけよくそのにおい、ニュアンス、を、映してしまう。

 小さくそこの隅で伸びをしていただけの記号よ、招ばわれて何を思う? なおまだ裾から転がり出ていってこのなかに詰まった肉をきれいさっぱり洗い流してしまいたいと思うのだろうか? しかし、なにの器(うつわ)だ。器とはなにだ?

 魔、それはおそらく器の響きをそれぞれにあらわして。いとど鳴る。かたわらには小刻みな震え・・・ト、地面をしかと掴まえて振るう歌ィ・・・。

 いかようにも、惑いを、記号に乗せ、ときには温度の上昇を、も、構わず、あなたらしく音声根(コン)の在り処を示す、して低く響いている、突然の段落を感じ、今止まる。身振りが明後日を眺めながら止まるときの、よそおゥイ・・・。

 ひしゃげた地面だ。いや、地面をひしゃげて歩いていたのゥだ・・・。そこへ生まれた。ひと握りの困惑の姿がそのひしゃげた地面に挟まっていた。私は誰をおそれた? おおよそ、秘密が、秘密が駆けてく、逃げ出してく。可哀想な、という形容を、他者として眺めた。そこで、同じ歌を繰り返し聴いていたのだ。喉ハふざけ、て、揺れる。暴露体質が私のそばで焦れている。

 「急げ! 急げってば!」

 しかし泥みたく水、のなかをものも結わずにただひとり押してゆく姿に全景は息を呑みしぃんと鳴る・・・。おそらくこの、振り向きを拒否した男は、奥の歯を噛み抜いている。奥歯を拒絶している。膜のマにあなたのとっピなメ・・・。

<898>「余情のヒ」

 触(ふ)。・・・。触(ふ)・・・、ト。ふとい、もの、追う。なぜか、酔(よ)、酔(よ)、う。た、よう。た、よう。いかさまように(いかように)、ものごとへ、身(ミ)、を、振れい、振れい、イ、い、居(い、イ?)。

 浸る。よし、可。もし、可。もの、をゥ、し、み、かたちへ、そのか・・・(鐘)・・・ね、が、ウン、ウン(ム)と鳴る。

 手(て)、て、テ・・・をのび、触れ、よ(よ・・・よ?)、鼓(こ)、それは、と・・・鼓(こ)。まとへ、バ、ここの歌へ、見(ミ)、ドゥ・・・。てらい。わたしのヒ‐街(まち)‐呼気の、ゆるやか。

 シィ・・・(市)・・・(恣意)・・・(知)・・・(士)・・・(気)・・・キ。ゆう、がた。ひとり、のその、影。と、疾走。おとはなくせ、おとはひらけ。ただ、(活!)、行方。をゥ、ひとりで。をゥ・・・。

 未(ミ)、み、繋いだ。わく、と、音(おん)、性(しょう)、ゆくと、ヒ、打ち、ヒ、枯らし、涙、わぁー、未(ミ)、だ。

 ときと、呼ば、イ。ひとのうなり。ひとのさけび。わたしはもくぞうがにの歓喜。ゆめと身(ミ)、ふたつのうねり。街から街へ、記憶の渋滞、コツコツ、と・・・指先を打つ!・・・ト、あきれるほど、そ(う!)、そこは、とびら、のにおい。

 雨と、など、をゥ、ふたりの目で見る(目で見たことが同じ・・・)。いずれ、は、遅かれ早かれを言(ゆ)い、たとえば、雫に記憶のないとし、ても、私には雫の、その、行先(ゆくさき)不明の、記憶があったらしい。その、感慨らしきものは、まるで関係のない時日(ジジツ)にひィょっと、瞳の隅にあらわれて、覗き込んだものは一様に困惑する。

 まなかに、音(おと)が棲むのゥ、なら、いくらも声にする一方で、無言が何処(ドコ)かで鳴っている、ノ・・・は、魅(ミ)と身(ミ)の共有する、えィがお(絵? 映画?)の姿かもしれない・・・。

<897>「重なりの中」

 ふと、立つ。姿は、染まる。ものは、順に顔を向ける。優しく増えている。

 私が木々のマにひとりで歩み、その、振るい方(かた)、雑音の仕方の方(ほう)へ、そっと耳を寄せるとき、あれは知る、ノ、限られた暮れへ、ひそかな話、今また鳴っている、ただ私には立っているとしか言えない時間にまたひとりで戻ってきている。時は私をつまんだりしないだろうか。そう思うといくつもの声で応える。

 完璧にふやけきった、その突端の音(おと)を聴いていると、なにやら、大袈裟な身振りもなく、ぞろぞろと、ものが戻ってゆくのが分かる。これが、晩というやつであり、これが夜(よ)の人(ひと)に知れない側面でもある。

 そのまま疑問形の、変拍子、でしかない、ありふれた態度で、しばしものを動かし、ときには跳ね、不具合と謳っては笑い、朝の露のなかへこころもち紛れていたい。

 完璧に分かってしまった人の前に朝はどういう表情をしてあらわれるのだろう。眼や、眼が、洗われ過ぎることに対して何らの言葉もこぼさないような・・・。

 私なら、完璧であることの美しさは分かる。完璧であることは分からない。無数の渦が次のマに何やら吹き込んでくる。

 道理で、朝は何遍も必要で、何遍も必要であるところに疑問がない。一回でいいもの、そはそは言(こと)とはまじわらないのじゃあ、ああ、、ないか。

 ゆっくりと時間をかけて頬に関わったものは、一枚や二枚で数え終わらない人々の日々を聴く。今も静かに耳を寄せている・・・。

 灯(とう)のなかを揺れている・・・。むやみにヒが揃い、風が揃い、列が揃い、なぐさみに送ったステップ、昼日中は向こうへ・・・。

 眠りの周りを、激しい物音が取り巻いているとしたら・・・。夢はなお夢の上へ重なってゆき、より迷ったものになってゆくだろう。

 走らねばならなかった。速度を上げてしまえばしっかりと落とせるものを落とすために、、あくまで私は走らねばならなかった。あるいは、全てが一致し、せめぎ合いの外へ少しでも出ているために。

 全景がういういしく、あくまでほうけた様子で、わぁ、という粒の声をそこいらに放(はな)っている。なにげなく歩(ホ)を止(ヤ)めた、と思っている人(ひと)へ、粒は嘘のように染みてゆく。

 なにげなくきらめき、なにげなく投げやり、なにげなく几帳面で、なにげなく踊る。ふたりは舞台のまんまなかへ、存在の粒をひと粒ずつ、そっと放(ほう)っていた。

 ひと声でおそらく流れる川、の、一瞬の静止を掴み(静止が川でないとしたらば何を?)、身体(からだ)の限りを尽くしてふやけるなら、そこへすゥっとまた再開が忍び込んでくる。

 なみだ、ミ、ためた。当たり前の遥か以前に、くぐもってオウトツのパロディを演奏していたとき、たれか静かに言(こと)を乗せてすっと窓を避(よ)けるのが分かった。あたしは地面に乗っていた。地面に乗っていて、いかがわしい音調の最中(さなか)に画々然(カクカクゼン)とした表情を移していた。

 夜(よる)は増えていた。また、それにしても朝は一度きりではなかった。存在がひとヒ、のなかへゆっくりと黄土色や橙のフリをしてゆ(行)く・・・。その背、姿、または湧いて・・・。

 場面毎の、停止を願望として浮かべるとき、つまり、渦から足を軽く抜きかかるとき、辺り一面真黒な眼に見えた・・・。

<896>「無私の歩行」

 疑いのなかの。あたしは、増える。指を触れる。触れ得(ウ)、るものの空(そら)、おそらくは呼気を読んでいる、ノ、は、わたしの震え・・・。

 ひとかどの文字に指を差し、目掛け、ト、そこでまろぶ。いまいちど小さくなり、いまいちど大きくなるの、は、なにだ? 視界の外か・・・?

 いっぴきの声の悲しさは、よく晴れた空(そら)に紛れ、また、視界の隅、おどけているのが映る、映る・・・。

 憶えているか? なに、記憶のなかに小さく分かれて棲んでいる、ノ、が、ふっと温度を上げるとき、がらがらと笑う、がらがらと笑う姿にしばし立ち止まる。

 特別な願いの指先に、短く、点滅、それは連続する線の素顔として、しょうたいとして、光る。

 あはれ、めまぐるしく変動する不安定性の言(こと)よ。私には嘘が許されている。が私には嘘が許されていない。

 めまえが大きな音(おと)で鳴るとき、少しく横へ、また横へ揺れてみる、ト、むかい側に笑みが、して、歩幅は小さめに、ずず、ずず、と、進んでゆく、と、晴れている。少しのびをする。

 無私の歩行は、たいそうな驚きでもって迎えられ、

  まァ、そんなものか

 という感想とともにある。

 わたしが言(こと)であるだけ、あなたがたも言(こと)である。そは、傲慢? そは、へりくだり? いんや、言(こと)を信用するその同じ形で、言(こと)以外をも、信用しているとしか考えられない。

 そとは暗い、そとは明るい、構わない、無私とシは歩行・・・。