<1208>「腕に彫られた道筋」

 道は既に腕のなかにあり、

 堂々と、

 あるいは無関心に、

 抱えているひとりの男があるけれども、、

 なにか不安げな、

 どう振舞ったらよいのか、という顔をして、、

 私は歩いているけれども、、

 

 歩いているけれども!

 かたちが感じられて、、

 ひとつ、抱えていて、

 ある、途方もない不気味な表情をしたこの包みのほかに、

 抱えてゆくものがないから、

 男は誰も知らない顔をしていた、

 

 あたしは倒すべき相手も持たないたたかいの姿をしていた、

 それはある意味、、

 長い時間無表情である、

 長い時間ぼんやりとした夢の中のようであるが・・・、

 時折胸倉を掴まれて、

 きゅっと息が苦しくなるばかり、

 まるでどこを見ていたらいいかも分からない、

 過ぎる時間に対して、私はどこまでも遅れていくような気持ちになる。

 どこまでも身体が自由を失ったような気持ちになる、

 それで、ふっとその一連の、

 何もかもから当たり前に還っていて、

 なんだったんだ(なんだったんだろ・・・?)

 と、

 どこか片隅の方で思うくらいな、

 平穏を、

 平生を、

 私は過ごしているけれども、

 

 少し待っていたのか、

 どうなのか、

 男はひとりで抱え直すと、

 また、誰も見たことがない表情へ、

 誰も見たことがなく、

 そこから、

 誰も見たことがない表情へ変化してゆくので、

 何が変わったのかもまるで分からない、

 不安が完全に性分と一体となり、

 物に変わってしまった、

 それをまたひと抱えしていた、

 わけだけれども、

 

 私がなにか ここで声を掛けるんだろうか、

 あなたとは別の景色でもお会いしましたね、

 と、

 なんのきなく、流れるように投げかけ、

 身体をびりびりと震わせて出会うのだろうか、

 一日という性質が、

 なにか想像を絶するかたちを帯びるぞ、

 と、

 ひとりで僅かに思っていた、、