<990>「夢はあなたを指差した」

 とんでもない日に出くわしてしまったものだ、

 わたしの足が、あの繊細な手の上を、なかを、なにの因果か、おそろしい熱量と新しさで歩いていたのだ、

 たれが知ろう、、わたしはこのまえの雨で場所を奪われて途方に暮れていたのだ、

 たれが知ろう、、そこに快活な老人の、悠然としてあらわれること、

 初めからここに線が、ここにきっかけが残されていたのだ、、

 するり、するりとゆく、、明るい暗がりから達人がこちらを覗いている、、

 わたしは最敬礼のおもいにうたれた、、

 そこには最後の導きがあった、、

 必然的に初めの場所に戻っている、、

 あの、静かな、女性らしい身振り、その背後、その内奥に、遥か遥かの、捉え難い、あくがれの、巨きな、巨きな完成が控えていたとすれば・・・、

 この場に全て遭遇してゆくのはわたしだ、、

 なにか白い白いもやがかかり、わたしを手招ぎする、

 あたしが静かにそちらの方へ誘われてゆく、、

 夢はあなたを指差した、

 夢はあなたのまえで自由に語られていたのだ

 とんだ場面に出くわしたものだ、

 あなたがこの夢を事前に作っていたのだろうか、

 想像の世界のなかに入り、

 あちらこちらで花が開く・・・、