ここは道か。あなたがさきはうただひとつの道か。
ひとりでに道の、香りかたへ細(こま)く揺れる。移す。
意識が鈍色に、鈍重なその眺めに重なり。
ひとつのかどを過ぎ、ひとつの煙たい意識のなかに花は匂う。
わたしを小さく隅に移す。虚ろなままのなかに、手のひら全体で触れ、そっとヒを置く。
なけなしの身体(からだ)を地面に静かに乗せて(馬鹿々々しい程ひんやりしていた・・・)。
ふって来るものの姿、形はわたしにもよく分からない。ひとつ見上げている。ひとつ何ものも見えていない。
浮かぶように過ぎ、晴れやかな匂いにむくと目覚めている気配に。
ただからからとゆき、渡し、轟音の、どこでひらいているのかも知らず・・・。
感興を蓄えてただひとり、そこに浮かぶ雲の匂いを待っている。ひとつのア・・・を運びながら・・・。
あなたは洞穴にひそもうとしていた。あなたの声のよく響くところへ。
わたしが緑色に変装をして、僅かに揺れてみせる。その隙間々々を、あなたは喜んでいた。
ひとつの空が駆けた。ここで小ささを失う訳にはいかないから、どこか遠くへ駆けていった。
安らいだ葉の隙間へわたしの笑みは乗せる。誰彼の別なく和らいでいる。そこになけなしの身体(からだ)・・・。
ただのだだ広い空間を借りて、この場は鳥の声に染める・・・。