<905>「別の泡に浮かぶ」

 現れてくる、かげからまたゆっくりと、笑みは笑みで・・・。歩(ホ)は、歩(ホ)で、どこまでもまとまった時間を持つ。その裏に浮かぶもの、多くの空想や、興奮の渦など、しかしわたしは冷静な拠点をも持っていて、また、その場へ居なくとも良いと感じている・・・。

 あとで想いをまたここへ返すことが分かる。そのとき、誰かしら得体の知れないものへ少しだけ、頭を渡してぼんやりとしている。先の自分が先に確信しているのを見て、変なことをする人(ひと)だと、ぼんやり考えてみたり・・・。

 次から次へ舌足らずに繋いでゆくのは・・・。わたしは感情を渡した? わたしは、あなたの湧き上がっては消え、湧き上がっては消え、スル、姿に、見慣れない街のイメージを重ねていた。ここへ歩(ホ)を滑り込ませてゆくのはわが身だろうか? 晴れてはまた、覆いのことなど知らないといった口振りで、軽さに身(ミ)を任せながら、軽さを疑っている・・・。

 人(ひと)はひとことの意味のなかへ自分を包んでしまった。ただ慣れない身振りのなかにあなたは輝きのひと呼吸だけを残して・・・。

 困惑はわたしのなかで他者になったり、ならなかったりした。もっとも、他者であればよいという考えは点かなかった。

 鈍い朝ののち、しばらく別人に浮かんでいて、それから沈んで混ざり、またふざけた泡になっていつものツラをその表面へさらすとき、ほんの少しのためらいがあれば、あとは前へ向けて語り出せばよいのだと知る・・・。