<873>「道行きの揺らぎ」

 真暗な道のなかに、私‐火(ビ)‐ひとこととして、揺れている。

 今日この、パチ、パチ、と、小さく立てるなかに、ひとの顔が見え隠れしては移る。

 歩行はちっとも困難ではない。そして、歩行はやたらな疑問点(困難)として現れる。

 私は目を、何ものかしら、過去のなかで回しておるのを知る。苦しいひらめきは何によっているか・・・。

 なかの道、抜けては、またあたたかさ。街道が激しかったという記憶を、またそっと、眺める。

 ただ、同じ動きを繰り返す。それが歩行の美意識だ。ここより遥か先、遥か遥か先の、しかし同じ場所で、同じ動きを繰り返す、私はイメージの音に乗る。

 私はイチバのなかで数え切れない声の塊として、いつまでもいつまでも響いていた。たれか振り向き、間(あいだ)、道には言葉がひらく。

 不透明な意識のなかに、あわいの問答がひらく。はたして、指のつぶやきによってサァ・・・ァァアとふたつに分かれた、これは選択肢と呼んでよいものかどうか。

 ひとまず噛み、そのうちにひろがるものは・・・。あっけらかんとした、生(せい)と、そのままの、日常性という言葉なのではないか。

 私が瞳を捉えたその日に、表情を見せた、しかし、あの道は・・・。たれか短い笑みをこぼした。

 含まれたひと日(ヒ)のなかに、立ち上がっては語るわれ。彼方、鼓(こ)を包む理由のない勢いを見た・・・。