波間にあたらしもの、兆し、ひとり粒となってはあらたしく混じり空気と一体になってゆく。この辺で、なまあたたかさ、おそらく味方の、例えば風があなたを吹き、記憶は十年前へ飛ぶ。
聞こえない、きれい、やどかりは転ぶ。折れ曲がって順に泡を出す。出すと思われたもののなかに、うつろい、うつろいの世の小さな瞳を覗き、隠しきれぬ、綻びはおどれら、わざとやっとるんか、とも響いている。
お前は、一瞬間に、顔を上げ、息を継ぐために為るのじゃない。斜め下へ潜ってゆく。その潜ってゆくことで、おそらく跡、文字をつける。所々で虫が喰らい、文字揺れてゆくとも良い。そこへ、跡をつけ直しはせぬのと、また潜りそのまま転倒したのと知らる事ば、読めていない。
ひたすらに、音こそ読んでいられると、夢楽しい。温みとも別れ、心がかりのそばで全て、息と息が塞いでいる。夜になる。緊張感がくらサで覆われてしまった・・・。たれ訪ねる。たれの足音を聞く。ここいらで人の、耳の形へと、言葉が滑ってゆき、余計な考えもしない。もし、耳が他の形をしていれば、言葉も違っていたのかも知らない・・・。
投げる。ひとの大きさで、すべらかな染みになる。雨後の振り向き、興醒めが音頭を取り、やがてどこかへ、ほの明かりが、訳もないまま、緊張しつつ、点滅を見せる。おどろおどろし、行列を表情の中心に据えて、縮小の気持ちと共に歩き出す。追い出さない。
嫌だ、嫌でないかは、今ここで問わない。
私に義務がある訳もない
ぞんぶんに溶け込ませるのと見初めたら、私なぞは音も立てずに染みてゆくことをしか考えない。いや、考えを持たない、染みてゆく音と色の変化をなるたけ近くで眺めることだけだ。なにもののものとも知らぬ複雑な舟を残りの水へ浮かべて・・・。