誰かその、汚らしい服を。
「平気で捨てていくのかい?」
俺は平気で訪ねた。ゆかねばならぬ、その街道の景色に、まともにぶつかった。と思うと、人の心は愉快にもならあね、と。
出来るだけの眼が出来うるだけの追跡を。闇雲に心は一言だけの嘆息を。
「あなたまた、何故そう無理を言うのです?」
重なりっこない挨拶に、ほんの少しの柔らかさ。お隣がそうであればあるほど、かかる言葉はどこにでも歩みを見出す。
これだけ勢いが単純で、これだけの変化が当たり前、であるからには、これから余計なことを、それはなくなって、辺りを静かに見ていくこと、その他のものという名前、俺が確かに返したと言いきれるものになっていま一度現れるのだと思う。
「あなた、やはりここで捨てていくのでしょうね」
いや、これは持っていくよ。そもそも、これはきっとどこかに落ちて、また拾ってと言われているなかで、半ば笑い合いたいような、そうでもないような。そんなに大袈裟に飛び上がらなくったって、私には分かるよと言った。