<586>「いない目のこと」

 この場所にもし視線がひとつないとすると。そんなことは当たり前のことだがもしないとするとどうなのだろうか。それでもつのか、もたないのかなどという余計な考えを早急に取り去って何故か私は緊張している。多分、緊張自体を望んだ訳ではないのだが。

 何が休憩になるやら分かったもんじゃない。何がここまで疲れさせるのかも。さびしくなかったりそうであったりするのに状況は関係ない。順番に回ってくる状態だ。どうしようもない、というリズムを聞くとき、非常にそれを暗く感じるのか何てことはない淡々としたものに思えるのか。状態が登場シーンを徐々に変えていくので幾度か対応し損ねることがあるようだ。君はその場面を眺めたのだろうか。眺めたところで、ふたつみっつの異常な呼吸に気づくのだろうか。気づいたところで、そこで思いきりガハハと笑う勇気があるのだろうか。勇気があったところで、程度のことを考えて遠くからひたすらに回ってくることが出来るのだろうか。出来る、それはあなたにも出来る。能力を見込むからではない。景色がそうあることを望むので、自然身体がそのまま進むのである。いやあ参った参った。何度も同じ映像を確認しているので私の表情は明るいのである。