<540>「自と想像」

 ふたりが少し遠くで話をしている、としたら・・・。そこで何が交わされていると想像するだろう? それが、何の想像もないのである。視線がこちらでさえなければ、何てことはないただ視線は、ひとつの不安だ。不安をよく見て話しましょう。よく見ることで、それはただの暗い穴であることが分かるのだから。アクションがどこかで持ち上がってそのまま止まっているのか、持ち上がる前の状態なのかそれとももともとここでは何も起こらないのか。

 どうしたよ、数多の音がいっしょくたになって耳を圧するようではないかそれに、私ばかりがそれを聴いているようではないか。騒音で埋めてしまえ。思っているのかしら、いや違うのかしら、そんなことは分からんが、見つめる目の数だけのうるささがあると考えていい。もう少し、ボーっとさせろ、いやもっと、全体的に強く、ボーっとさせろ。

 何だ? まだまだ足らないと考えている人に、足らないものは何か? 検討か? 経験か? 一日の中に、こんなに瞬間があるのじゃないか! もう少し易しく回転するものと思っていたが、どうやらそれは嘘みたいだ。いや、嘘みたいだから嘘ではないのだが、ひどく全体に、つまり私にも、視線にも関係があることらしい。