<324>「倦怠の隙間」

 話合いは済んだ。尤も、話す前と後とで何の変化もなかったが、ともかくも済んだのだ。納得が行列を成していた。前と後ろに在る人が、私を挟んで何やら喋り出すのだが、ともかくも知っている情報しか交わされなかった。安心が行列を成している。不満そうに流れに逆行する人々の群れに引き止められ、二、三、言葉を交わしたが、ともかくもまあそれだけだ。そうしたからといって何か特別考えを変えるような事が起こる訳ではないのだ。ぞろぞろぞろと動き出す行列の中身にもう一度色と検討を混ぜてみたらどうなるであろう。好奇心が手元を滑らす。ジュワッと何かが溶け出すような音がした。音の方向へ歩くともなく歩いていると、突然、場違いな感覚に捕らえられ、意気消沈す。しつこいまでのチェック作業が続いている。カバンの中身をぶちまけてやれ、俺ならそうするね。しかしぶちまける面倒をどうにも考える。やだなあ、面倒のことをすぐ考えるようになった。そうして不格好にぶちまけられたから、誰かが笑ったり怒ったりしてやらねばならないところも、しそびれた。別にどうということもないという顔が、行列の顔が、洗面台へと真っすぐに続く。ジャブジャブというリズムが響き合い、まろび、初夏の照りを受けて生暖かく光っている。典型的な動作を脇に従えて、車道をゆく。運転者はお手上げの構えを見せる。はにかむようにして渡り、異存もなく、経費もないから、歩ける範囲でぐるぐると回った。うんと遠くまで行ってもいいのだが、戻る場合のことがある。そう、面倒のことをやはりまた考えるのだった。