<306>「二重に巻かれた溜め息」

 念頭に置かれないものの在処。そうして平静、普段の到来が肘をつき、こぼしては渡り、こぼしては渡る。二重に巻かれた線を幾度となく訪ねては、関係不要の興奮があたたかな渦を成す。また後退、そして、また・・・。

 よく見られたものとしての遠慮、あるいは遠慮のなさが、いつまでも薄い膜を撫でているかと思うと、その後の予定というものを全て止めてしまうまでにはなった。安心した。私に頼まれてもそれは断るほかなかった、否、約束されていた流れをそのままに、中途半端に肯定の色ばかりがちらつくのだった。イライラした関係で、情けない渦は明日の朝をひたすらに渡る。

 息を呑む回数だけ数えているかと思えば、いや、もう帰りますと言い切る無限定の群れ。盛大に呼吸を取りこぼし、攫われた街を渡りそびれるよりほかなかった。あちらはあちらで・・・。