<291>「朝がふたつ」

 朝がふたつ。続く天気は晴れ、ややまどろみ。冷静な水しぶき、なべて夢に持ちこみ、夕日は停滞。

 朝がふたつ。どうりで天気快晴。やや迷い、冷たい水しぶき、夕まぐれの倦怠、夢に持ち。

 露骨に道を渡る男の肩を控えめに掴み、軽く引きずり回した後で、暗さを待つしぐさ。滑らかな歩みが非常な嬉しさで語られ、蹴られ、信頼していた行き先を、鮮やかにまるごとあっけなく変えてしまう。

 朝がふたつ。起床は霞み、高速で移動する群れ、後悔を横に添え、嫌悪感で一杯の顔へやたらに絡みつき・・・。

 朝がふたつ。どうしても、もうひとつは欲しく、欠けていく暗さを惜しみ、数多のものが集まる予感を覚え、項垂れたその目は光る。持ち上がるところまで持ち上げられた心配事は、ことのほか小さく膨らんだ。