<279>「難儀する鉛筆」

 不合理な名前を、ひたすらに呼んで、ろくに交わしもしない会話を踊らせた。午後のけだるさ、よく見えるものは皆素早く動き、その色を証拠に捕まるのだ。担当でないという戸惑いを、表に出すか出さぬかの違いだけで、私もあなたと同じような余所者だ。恥を知るという難しい宿題に、難儀する鉛筆だけがその丈を減らす。一緒に見るのだ、始まらないはずの試合を、よく日に焼けたグラウンドを。ひとりで座っていることがどうにも一番自然に思われてならなかった。きっとこの角度をもう一度、夢で確かめるのだろう。よく冷えた夢を満たす一筋のコーラスが、オーライオーライという終了の掛け声を聴いている。