<278>「夢の中」

 今まで会ったこともない人、見たこともないものに出合っても、

「これは、以前どこかで見た光景をいろいろと組み合わせて出来たものだ」

とは思わないだろう。しかし、夢で同じような場面に出くわせば、

「ああ、これは私が以前見たもののあれこれを組み合わせて作られた結果としての新しいものなのだろう。よって、全く知らなかったものという訳ではないのだろう」

と思う。何故か。実際の景色は脳みその外に存在しており、夢の景色は脳みその中に存在しているからだろうか。

 脳みその中だけでは、新たなものに出合うことはないのだろうか。夢を見るたびに、ふとそんな疑問が頭をよぎる。既知のものの組み合わせでない場所を見ているような気がしてならなくなることがある。あんな人、あんな要素を持った人に会ったことがあるだろうか? 夢は蓄えられたものしか映さない、完全に中のものなのだろうか。外でもあり得たりはしないのだろうか・・・。