<1250>「あの朝」

 あの朝はいつも冷たい、、

 あの朝は独自の色を動いて、、

 独自に温まっている、、

 私はひとりでに温まっている、、

 空気のなかに線を引く、、

 線は次々に様々の色を弾(はじ)く、、

 朝だ・・・

 

 朝はなんのきなしに微細で、

 ただ小さく揺れていて、、

 種々の線が過ぎる、、

 過ぎた方でまた尋常その色を取り込んでゆく、、

 尋常蓄えてゆく、、

 軽やかな線の気配を通して朝が得られているということ、

 身のこなしがいちどきに朝へ参入してくる、、

 朝だ(朝なんだな)、

 

 しん、、として閉じられていた穴という穴がくちをひろげはじめあたりまえに一方向目指してものが起き上がるさま、

 そのなかに光を足してゆく、、

 ものがよく見えることも疑問に思わないぐらいのひらけた時間、

 そこにひとりは立っていて立っていることを忘れている、、

 時々頬の右斜めから巻き起こる煙の、そのゆるやかな浮かみを見て今、朝というものの細やかな身振りに出合うがそれもぼう、ぼうとした意識にはアマリなんのことだか分かっていない、、

 

 線をかきました、

 音をかきました、、

 幾方へ色は過ぎます、、

 それから呼気あり、 茫漠とした夢は薄い膜になってからだの外側をひらひらとサセル、、

 そのただなかに朝は入りさっきから微かな振舞いだけを残してゆっくりと待っている、、

 ただそのゆったりとした眼(まなこ)にさっきから溶け込んでゆく線のさま、、

 ひとりひとりの点滅、、

 からだがあるあたりまえの光の中に紛れて少しも違和のないさま、

 違和のなかに呼気がするりとすべり込んでゆくさま、

 

 あの朝のなかに私は起きている、、

 ただぼんやりと動いて、、

 記憶と色とがただゆっくりと照り始める朝に同じようにして私も立っているのだ、

 朝はただ立って待っている、、

 あるいは薄い膜をゆっくりと口へ運びながら、

 溶かしながら、立っていて、

 幾方に顔を向ける、、

 その顔には無頓着で、ただ光りの散るなかへあまり確かではない思いを持ちながら回転しすべり込んでゆくようだ、、

 このからだも照っている、、

 私はよく見えていた、それがなにということもなくて、