<81>「山のあいだで」

 別のことが可能なら、同じことも可能である。山並みを駆け、意思というものから全く脱落した境地で、今日も私は元気です、奇妙だね。何の為にそこまで意固地になって拒絶しているのかが分からないという点で、ヒクヒク笑いは正当化されるのだろうが(誰に禁止されていた?)、それが今到達可能な地点として目前に鮮やかに開けてくると、禁止を置いておいた理由の確からしさが重みを持ってこちらに迫ってくるのである。昇る、というより染まるという表現の方がよほど美的で、照らすというのが論理的なのだろうか、ただの色が温度を持っているというのがどうにも平凡な考えだとは思われないほどに赤、だいだいのふち。吐く息は冷たくなければならなかった。