<49>「裂け目に映る水、人」

 何かが動き、何かが刻々と変化していることは分かる(それでも、大分時間が経ってからだが)。だが、どこかへ向かっているという話は分からない。暗闇は暗闇でしかなく、そこに伸びる線などは、どこにも見留められない。直線を見たがる、見留めたがる。ベビーカーが、そのまま社員証へと突き刺さっているような具合に。しかし、そんな道を歩んできたのか、向かっているというのは嘘ではないか、断絶、断絶・・・。

 断絶・・・。そうだ、その切れた空間に、何かの秘密があると、そう思いたい。そう、思いたいだけなのだ。非力な希望。重大な秘密など宿しておらず、裂け目はただの裂け目である。