閉じることも同時に願っている

 生存本能という言葉が示すように、生き物は一生懸命に、死をもたらしてきそうなものから遠ざかろうとしている。ただ、それと同時に、消滅したいという願望も持っていて、それは本能と呼んでも良い程度には強いのではないかとも思っている。

 矛盾するようだが、何も存在していなかったところへポンと生まれ出てきて、それから死ぬまで延々と生命を開き続けている訳だから、その反発として同じ生き物が内部で、

「閉じることを同時に願っている」

ことがあったとしても、さしておかしなことではないのではないかと思っている。

 しかし、それにしては自殺という現象が人間にだけ顕著なのが不思議なような気がしてならない。生命活動という、それ自体休みなく開き続けることを要請する活動の内にありながら、他の生き物はそれに対する反発衝動を覚えることは無いのだろうか。