「幽霊がいる」というときの「いる」

 「幽霊は存在します。だって実際に見たんですから」

と言う人がいます。反対に、

「幽霊なんて絶対に存在しない」

と言う人もいます。私はどちらかというと後者の考え方に近く、

「もしいるとしても、それは実際に存在するということではなくて、見たという人が、自分の見たいものを意識の上で作り出していたのだろうと思うし、あるいは、何かぼんやりと目線の先に広がっていたものを、後から脳内で幽霊だと勘違いして理解したのだろう」

というような考え方を持っています。

 ただ最近になって思うのは、それを「いる」と呼んで良いのではないかと言いますか、

「幽霊は、いる」

というときの「いる」は、必ずしも、現象として確かに起こりえるということだけを指す訳ではないのかもしれないということです。

 そもそも霊というものは、肉体的というよりは精神的な方面に深くかかわりがあるものだと思いますし、また、人間一人一人の中には、精神世界みたいなものが、物質としては存在しなくとも、概念としては確かに存在する訳です。そう考えると、幽霊という存在に関しても、現象として確かに起きているということが証明されずとも、概念として人々の中に存在していれば、それは確かに存在すると言って良いのではないかということを思うのです。

 ですから、

「幽霊は、いる」

というときの「いる」に、概念としての「いる」が含まれているならば、

「幽霊は存在します」

という発言も、分からないことはないです(笑)。

 残念ながら、現象として存在するかはいざ知らず、私の中には「幽霊」という概念すら確かなものとして存在していませんから(笑)、

「幽霊は存在する」

という発言を否定しないまでも、全面的に頷くまでには至りません(笑)。