<993>「動物の新しい歩幅」

 今日(こんにち)がわの空(そら)、

 晴れま、そんなことがあったのかしら

 あったのかしら あったのかしらねえ・・・、 

 ただあたたかいわ、、

 わたしぼんやりふたつに分かれてゆくみたい、

 いえ、、

 もっともっと多い、

 数限りないその分かれ、その分かれかたの先に、

 新鮮な歌がある、、

 ひとが目を覆い、やめ、またひらく、ひぃらく、

 羽の名を借りて待て、、

 そしてただ穏やかに風に乗れたらいい、

 ただ花の色が映る、、

 全体を草いきれに塗ってしまう、、

 まどろみはまだそこにいる、、

 あなたの額(ひたい)のあたりで、しずかあに様子を窺いながら・・・、

 なぜよ なぜよゥ

 わたしはわたしよりはやい、、

 過去のわたしがちらちらと後ろを振り返ってるうち、、

 あしは必ず少し先を踏みしめている、、

 あァ、動物だァ、

 動物だから、どこへでもはやく、

 息は荒く、、

 佇まいは深く、、

 そしらぬ顔の先に、、

 ただもう湧き出すいのちのひとつめが始まっている・・・、

<992>「無所有」

 どうして どうして あのひとも あのひとも あのひとも

 あのひとも

 あのひとも あのひとも 

 好きじゃいけないんだ、

 そんなことをたれかが決めるなよ、

 おれが好きなんだよ

 おれは移ろうよ(多分)

 わたしが嬉しいから ゆくよ、

 ひとがわたしのことどう思ってるか好きかどうかなんてどうでもいいよ、

 わたしが好きだからゆくんだよ

 嬉しいね、

 なにがってわたしがこんなに沢山好きなひとを持ってることがだよ、

 相手が本気かそこまでじゃないかとかそんなのちゃんちゃらおかしくて、、

 めちゃくちゃウケる、

 はやくゆこうよ、、

 めちゃくちゃ話したいことあるし、話したいことなくてもそれはそれで構わんし、

 だってもう死ぬよ

 なんとなくわかるじゃんそういうもう先長くないとかさ、

 はやく会わないと、

 会いたい人にだけ沢山会わないと、

 あせってんのかな、

 というかひとってみんな死ぬから、焦らないと!

 もう今じゃなきゃ会えないかもよ?

<991>「粒も粒で眠れた」

 うるう、、

 語り合う、

 なんだ なんだ からだから徐々に溢れていくぞ、

 放射 放射

 わずかな隙間に、

 あのひとの笑みが覗いていればいい、

 ときどき分からなくなる、

 ときどきわたしは分からなくなる、

 ・・・、いま、何が分からなくなったんだった?

 忘れた、

 まーいいや(眠れたし)。

 ところせまし ところせまし

 まだけわし まだけわし

 たくさん溢れてくわたしわたしの名をどこへも連れてく、

 ふわっ、

 どこからでも話すじゃん?

 話すとするじゃん?

 するとね、あんたは徐々に徐々にいろいろと繋がってゆくよ、

 騒がしいでしょ(そうだろうね)。

 騒がしくていいでしょ(どうでしょう)?

 あんたなんかまた変なの届いているよ

 変なのって言うなよ、

 よく見ろ、いやもう逆によく見るな、

 感じるな感じるな、ぼんやり感じろ、

 なんとおりも なんとおりも

 あぁ全くナンセンス、ふやけきっちゃって嬉しくてもいいだろ?

<990>「夢はあなたを指差した」

 とんでもない日に出くわしてしまったものだ、

 わたしの足が、あの繊細な手の上を、なかを、なにの因果か、おそろしい熱量と新しさで歩いていたのだ、

 たれが知ろう、、わたしはこのまえの雨で場所を奪われて途方に暮れていたのだ、

 たれが知ろう、、そこに快活な老人の、悠然としてあらわれること、

 初めからここに線が、ここにきっかけが残されていたのだ、、

 するり、するりとゆく、、明るい暗がりから達人がこちらを覗いている、、

 わたしは最敬礼のおもいにうたれた、、

 そこには最後の導きがあった、、

 必然的に初めの場所に戻っている、、

 あの、静かな、女性らしい身振り、その背後、その内奥に、遥か遥かの、捉え難い、あくがれの、巨きな、巨きな完成が控えていたとすれば・・・、

 この場に全て遭遇してゆくのはわたしだ、、

 なにか白い白いもやがかかり、わたしを手招ぎする、

 あたしが静かにそちらの方へ誘われてゆく、、

 夢はあなたを指差した、

 夢はあなたのまえで自由に語られていたのだ

 とんだ場面に出くわしたものだ、

 あなたがこの夢を事前に作っていたのだろうか、

 想像の世界のなかに入り、

 あちらこちらで花が開く・・・、

<989>「あなたによって、わたしは、たった一度の歓喜だ」

 あなたのそばで、あたたかくて良かった、、

 瞳は静かないき、

 瞳は静かないき、

 どこかで切り上げなくてはならないなんて・・・

 わたしのすぐそばの渦、

 ただあたたかい光のなかの水

 ぼくらを先頭で招ばう声、

 割れている

 あなたを高らかに歌う

 たくみな移動

 たくみな足腰

 しかし晴れやかな表情

 優しい匂い

 わたしに分けてくれた、

 突然どこからかさめて出る、

 わたしがそこからさめて出る、

 適当な頬かむり、、

 あなどれない、

 すぐそばに滑らせ

 はしゃぐ わけは はしゃぐ

 渦を巻く目、

 ひとりで考える、、

 謎は深くなっていく、、

 ただたくみなたくらみに優しくヒが照っている、

 あそこでああして優しく照らす意味が分かるか、

 おそらく分からない

 それでもわたしはたった一度の歓喜だ、

 それも繰り返す、

 それも蓄える、、

 冗談半分のひと言、

 たのしい泡の時間、、

 ひどくさわいだ朝、

 過去からたれか駆けてくる、

 必要以上にわたしの音が聞かれはしないかと・・・、不安になる、、

 不安はただあなたのひとことによって救われる、

 あまりに軽く

 あまりに気持ちよく、

 掬われたことすらしらず

 はしゃぐ わけと はしゃぐはしゃぐ

 ひとびとの記憶のなかに

 ちらつく問答無用の優しさ、、

<988>「あわてない」

 また来るよう

 さて どこへ?

 わたしは方角を知らない

 わたしが全て新しくなる

 たださらさらと流れている

 見てよこのまっさらなひたいを、、

 あわてない あわてない

 常に合言葉をとなえてくれるひとの顔を思い浮かべる、

 深くいきがはいる、

 あなたの水色のイメージとともに、、

 湯殿にひらべったくなっていて、

 飛ぶ 飛ぶ とぶ

 あなたが弾(はじ)くイメージが 飛ぶ 飛ぶ

 まるで夜空に 星

 となえた合言葉はいまだ口もとにしたたり光る、、

 ありがたい、

 ありがたいかぎりのとなえ、

 となりにうわついた気分で座る、

 まぶしい まぶしい

 ひとの流動 何もかもがまぶしい

 思わず弛緩するひと、

 思わず手をたたくひと

 はしゃぐひと はしゃぐひと

 分けいでて進む はしたなさを味方に

 わたしの勇気 取り立てていうほどでもない勇気

 そこに一切の喜びを見て、、

<987>「私はひとつの温度のなかで」

 やわらかい声

 やわらかい場所、、

 やわらかい響きのなかに、わたしがひとりくるまれている、、

 膨大な嬉しさとともにわたしはひとりでした、

 道をゆきます

 すると、あらはれる、、

 あなたはあちこちからあらはれる

 あちこちにひとりのわたし

 たかが小さい声音がその胸を過ぎ、ふるえ、

 特別に透き通ったやらかい顔を見せてくれます

 あなた一流の温度でもって、わたしは今日の陽(ヒ)のやわらかさを静かに受けとめています

 疑いもなく素晴らしいということを、

 そんなことはないはずだという思いとともに

 ともにそのままひきずっていってください、

 ・・・

 急にどうしようもなくひとりです

 全ての景色はたったひとりで見てくださいと言わんばかりに。

 わたくしが目一杯愚かしく画面に移ろうとする、

 と、

 拍子抜けするほど、素直な、すっきりしたひとが立っていることがあります。

 わたくしはたれかの温度のなかでややふるえています、

 それはなにのためにでしょう、

 なんて複雑な、なんて簡単な、ひとつのいろ

 ひとつひとつ取り戻そうと焦らなくても。そんなことはない。順調に染(そ)みしています。