<758>「声の転倒する先」

 なにげなさ、と私でふたり。まるで関係がない。片付けられると、すぐに、充分な雰囲気のなかでまるまっている。後には誰が続くのか。応える人は、どこか遠くを見ていて、通常の声とて、転がって、どこへ。

 あらかじめ集めておいたはずのものとの語り。お望みなら表情ごと浮かれて出すひとり。不明、の間を気持ちよく動いていた。誰にとっても懐かしい。ならば、戻るのはいつになるか。いや、ほとんど戻っていて、流れだけが見える。

 偶然を、頼るまでもなくデタラメの、その一歩に複雑な重さをのせているとき、考えのつかない言葉から言葉へ、いたずらに振動が渡る。多く発されるとして、それはそれで良かった。だって、いつもの器のなかだから。

<757>「漏れる量の」

 いきなり、ではない。ただひとつごっそりと抜け落ちたあとの立ち位置で、述べるにしては長たらしいものがあった。一から十まで、その途中に何の漏れもないこと、そのいちいちに疲れていた。今考えればそうだと思う。

 全くもって別のものになりますよ、承知ですと、それでも説明がある、そのことの方が大事なのです、と。別人の、ありもしない場面を、よく知る出来事に絡ませていく。それでその話は誰が納得するのだろう。

 隠れては、歩く。隠れても、歩くとする。意図から逆さになっておりて、分からない。一歩一歩が、初めて置かれたものから遠くでなく、ただし離れていて、迷うことさえ少し変だと思える。かたらないでいる。

<756>「この一点」

 とにかくも、立ち上がった。やたらに静かだった。俺は、何にもない一日を思い出して、これもまた静かだと思ったものだ。別れと、ふさわしくないものに、突然、弱々しさと風が当たりはじめる。ああ、今度もまた、俺の年齢がない。

 例えば、全部が全部、このために用意されたものだった。としても、偶然に振り向いている、偶然の方へ、何の気なしに振り向いてみせるもの、と、当たり前に考えている。どこからか追い出されてきた。呼吸が落ち着いているので、顔でも上げた。

 なにやかや、と、関係づけようとしても、眠りはなおどれからも遠く、別人が、あればあるほど集めて回るべきだとも言う。ここからいくら離れてゆこうとしても、その、曖昧な撫で方に、撫で方に関わるものに、自らの揺れを集めなければならなくて。

 

<755>「夕方をくれろ」

 お前の横で、ハタと倒れたところで、お前には見えていない。どうしたものか、考えるそばから、わざと集まる。苦しさを、知らないと言っては笑ってしまうし、知っていると言ってもそれは同じことだ。いとも簡単にくだらなくなってまたすぐ始まっている。

 訳をきく、ことではないと、徐々に徐々に拡がりはじめて、また、こいつは、話の外にいるつもりなのだと傾いた。失礼があった。しかし、ほんのしばらく、なんなら長い間ぷいとそこらに出ていることが好きだった。

 次々、これだけ重なるのなら、余計な一語はなおのこと要らない。それで、余計な言葉だけが盛り上がってくる。今から何とでも言おう。忘れたことがひとつ程もないことに気がつく。全部がその通りなら息も詰まろう。いつでもまた夕方をくれよう。

<754>「豊富なひとつの息」

 続々と誘う、誘われる。これがともかくも案内された表情だったことがひといきに分かる。分かりましょう、今度もまた今度も。なるほど、ひっくり返しては、目の前にある、弾みがちな言葉。全部が全部に触れている。

 わずかの隙間でも、どうでも、おそろしいばかり。遅れに優しく微笑みかけているばかり。誰でも、という訳にはいかないが、なくなるならなくなるでとんとこれらの、叩き方に傾けた期待。いつの間にか言及されている場面。

 落ち着いて、から感想を通り抜け、たくましい態度とともに割れてゆく。ゆっくりゆっくり割れてゆく。何故こんなに沢山なければならないのかを、問うたり、問わなかったりで、きっと、歩き方も決めていない。それは誤解かもしれない・・・。

<753>「語らせた跡」

 あしたまた語らせにしたまま、とても、長い、長いゆき方がある。不足ともまたかかわり、わざと、どうでもよさと一緒になってみたり。わざわざ感情にかかわらせる辺り、いまいちスムーズに対する疑問があるみたいだ。

 誰かが角度を言った。それに合わせるだけ合わせてみたあと、平気な顔をするまでの間、いくらか時間がある。遠慮するにしては大きかった。あなたを見て、表情にはそれなりの角度が必要だとも考えるのだった。

 止まってほしいとも、動いてほしいとも、確かに言っていて、ある全く関係のない地点を見て物事を考えていた。あすもあすもといつも頼み、難しい事柄、よく見るといくらも平気のなかにひどさが、ひどさのなかに平気があるようだった。

 

<752>「種」

 たね、まかる。まかると、軽い。たね、まかれて、かぶさる。ことごとととも、まじわり、恥ずかしい。たねごと、飲み下して、またたね、少しだけのぞいている。たねとて、見ている。たね、まかる。だれのほう、だれのほう。飛び上がるくせ、また訪ねる。例えば、明かしてほしいだけ。たねごと、ひととびに浮き上がるところ。ところで、たね、かため。たねのまかる。まかるるくせ、再び膨らむのとの期待。たねはかたる。かた苦しさのなかで。たねは飛んで、少しベタつきながら。たねのまかれているところ、ふとした不安の下で、地面ごと盛り上げて。平気でたね、膨らんで、ためにならない話のなかで、たねは育つ。任せると、たね、たねまかせにすると、するとたね、たねとふたりの人。たねはまかれた。語りたがりのそばで、もう一度、かたまりに似てくる。たねごと飛ばす。たね、まかる。まかるるうえ、たねはふたつの期待に、もりもり応えている。たね、ひとつだけ明かしてほしい。だれのほう、だれのほう。何事もなく開く。たねは大きさのなかで笑った。たねらしさ、見当たらず、容れものに、たねとふたり。うねり、たねまかる。まかるるとて、たねはたね。傍目には輝き、気がつけば語らい、噂以上のたね、たね以上の噂はなく、評判通りにたねがある。たねは通る。たねから食べた。もりもり食べた。不安になって口々に飛ばした。たねよ。