<646>「温暖な涙」

 「馬鹿じゃないのかしら」

あなたはふと投げて、ここでまろぶ。ちょうど、暖かさだけが涙になり、一切が緊張を伝った。長々、と、眺めたければ、眺むれば・・・いいのだ。昔、見たときと、そう、気にしているだけに、新しい顔が、何度も、何度も、そよ風のそばを掬う。

「うしろの手をあたためているのは・・・」

何故か、歩みが滑る、それも、心地良く。パタパタという、手間さえ笑われる陽気。人も彼も何も水になって、空気をさらうと、ここだけが、いつも、いつも、落ち着いた通り道。

「わざと・・・」

止めたのでしょう。どうしても、眩しさでは足りなくて、分かち、ながら、後で、後でにする。私の番など、なくてもいいから、この滑らかな期待が、いくつものもの解いて騒ぎ出すように。必ずと、言えないだけで、あるひとつの、戻り難い、気持ちの迷い方、どうも、バラバラだと名づけるには、あまりにも踏み出しが、柔らかいので。

<645>「留守居」

 輝く冗談にかまけていて、確信と方向だけが分からずに去ぬ。あーそれ見ろよ、あくびと同じだけの整列が回っている。

「当たらぬ、当たらぬ」

きっと、不安を感じる前にシュートして、場所柄にもなくウキウキと舞い上がってみたとでも、話したげな刻限の会話。

「もう一度、おんなじことをもう一度夕方に話してくれよ」

しぶしぶ頷くとなにかまた、私の記憶は気分としか言えないみたいな流れが、徐々に出来上がりつつあって、隣の人と確かめあうことは、たし、かに、あたらしくて眠たい。

「なんでかわりばんこに使うんでしょう」

少年は憤慨した。これは何時間もかかることじゃないか。真面目だねと言われて首を傾げた。この人たちは、部屋の中にいて、それがだんだんだんだん大きさの伴わない、ただの浮遊物になることを知らないのだろうと思った。

<644>「魂の外の夜」

 ひそかな隙間から、こちらを窺うもの、魂の外にあり、

「また違ったものと、まるで違ったものと受け取れるようですよ」

と、何の自信も、不安もなく、おとなしく告げている。なんであろうか、おとならしい、この映像以外である、ということが、次から、次から、当たり前に流れてくる。それに対して、何らかの、意見や感想が、あるはずもなく、

「ええと・・・。心地良くなくなりそうになるのはさ・・・」

と。深い深い、覆われたものや、そのほかになられて、あたふたとするなよと、ふといつもの歩み出しが、脳裏に翻る、ひる、がえる。

「もう夜ですよ」

知らない。そんなことは、当たり前の頭脳には知られない。弾けて訳もなし、腕だけは、何もの隠れられなくなり、あらあら、汗、遊びたがりの表情から私を連れていって、何度となく、うたた寝とまた軽々飛び越える不規則な過程、かはは、かはは。

<643>「姿勢」

 お前、の、座ったり上がったり、お前、の、座ったり上がったり、お前、の、座ったり上がったり、それ程でもなくはなから慰められること、とともに流れてくれれば、よく、見えているはずとなるのだ。この間、久しぶりだろうと、眺めて、いて、確かめるつもりで湧く、湧き、湧け、湧こうとするとなかから、

「何故だ」

何故だの行進。よく動いている、動いていることが真反対のコミュニケーションを作っている。嬉しい、嬉しいと思い込んでいて、嬉しい。あたため話し合うのよ、なんでもこの頃内側を通らせて、かたまりのなさを投げる、投げると、

「あれ、あれは私のフォームではありませんか?」

と。この人の形は、この人にしか出せませんよ、なんて、変な言葉がゴロゴロここらに転がったなと思うと、やっぱりその通りなんだからなんとも、なんとも懐かしいはずだった。このように、汗を垂らして、何を思ったか繰り返し、繰り返し同じ動作を必要としていたこと、どこかで憶えていて、当たり前に出来ること、それは場所を択ばない、と言うがなにさ、おんなじところから一歩も動いて、いはしなくて。

<642>「流れるよ、流れるよ」

 当たり前が少々を追いかけている。あた、当たり前が、少々を、追いかけること知らず(当たり前でしょう?)。ハナっから、なんだか、頭っから、なんとか、伺いたいよと澄ました顔が、私の、前から、徐々に、徐々にまたイメージへと還っていく。薄さ、残る風景は薄さ。なにがなんでも、溶けていたいよ届けることなんでもとろけていたいよ、うなあなたの話、

「あなただね、あなたがまた、頭なんだね」

なくなく、なくしたかどうか知らず(分かる前でしょう?)。ありたけの、ありたけのあくび、記憶と記憶を入れかえる(よね?)。撫でて、混ぜてみせてくれると、ばかりあら溜め息は並ぶやら、なにやら、やさしかったよそうだよ。音もなく、身体わたしの元ではバラバラ、そばから、

「流れるよ、流れるよ」

とだけ。その掛け声に、つられてまたひとつの。

<641>「手になるほかないのだ」

 かかる音で流れ、待たれ、渡れなくもない、とわざわざ言うと、後でまた、おい、みい、たあ、なあ、とまず自分なりのおどかし。おど、おどおど、どこで絡めようか手に、手になるほかはないのだ。今度ばかしちょっとまた、確認したいことがあるのっさ。

「やっとこさ」

と思うってえとああ、順番にわたひやひやはあはあ並びだけが何故やらおそろしいものを掬っているよ。どうでるか分かったもんではないのだが、振り返る似合わず、後々著しいのはまた考えに次ぐ考え、感嘆詞次ぐ頑張れ。なあに、なに、へ、そ? また回り、落着いてくださらないと、新しい緊張で景色ばかりを簡単なものにしますよ。

「と、まあそんなことを言いふらしているもんだから、私がひとつ駆け込んだ」

「で、なんて?」

頭にくるぐらい割に良いってさ。

<640>「繰る、繰る」

 どのように、訪ねたのかが、分からない場所で、ひとり、小さく、立っていて、ここいらのやけに静かな、風という風が、頭のなかで、動く、動く、動く。

「はて、なかなかに、聞いたこともない・・・」

うと、うとうと、あたらしい、この頃の、強い、渡り方、などを見ていると、見ているだけのことはある、ように、微笑んで、何故か、何故か、何故か。学び合いたい、ここからちょうど、の場所を見極め、遥か彼方からなだらかに測ること、これでまた、何度も、訪ねづらいと言うこの間合い。

 そうねえ、何やらまた、当たり前、当たり前と、ゆるく、ゆっくり、走って、ばらけて、いや、しない、いや、いやしない。例えば、順番に回るとして、だが・・・。