<2311>「死んだら読まないの?」

 あと何年生きるかによって、大体読めるはずの本の量ってなんとなくわかるじゃない?

 そうするとさ、とても不安になるというか、焦るよね、早く読まなきゃって。

 あと何年生きるかによって、大体書けるはずの文の量ってなんとなくわかるじゃない?

 そうするとさ、とても不安になるというか、焦るよね、沢山書かなきゃって。

 

 う~ん、そう?

 そうじゃない?

 いや、死んだら読まないってこと?

 え?

 死んだらもう読まないし、書かないってこと?

 どういうこと?

 死んだって、別に読んだらいいし、書いたらいいじゃない?

 ・・・

 違う?

 まあ、確かにそうだね。

 そうか、そうか、死んだら何で読まないと思い込んでいたんだろう。

 死んだらどうして、書けないと思い込んでいたんだろう。

 そうだよ。生きている範囲だけで考えたらそりゃ有限だし、焦るよ。

 でも別に、死んだだけなんだから、そのあとも読めばいいじゃない。

 そのあとも、別に、死んだって、そのあとも書けばいいじゃない。

 生きている範囲だけで考えたらそりゃ、短いもん。焦るよ。

 死んだら読まないの? 読むでしょ?

 死んだら書かないの? 書くでしょ?

 生きている範囲だけで考えないこと。約束のひとつ。

 約束のひとつ。

 だから今日で全部やらなくても大丈夫。

 死んでもまた読むんだから。

 死んでもまた書くんだから。

 

 そうか、死んでも読むんだ、この人間は。

 そうか、死んでも書くんだ、この人間は。

 人間て、長いな。