芯があらわれ、吹き出るように燃え、
しばらく眺めていました。
さあもっと渦を巻かなければならない。
もっと風を送らなければならない。
そうして口をアいたまま、街道沿いの建物の、いくらか上階の、窓辺に新しい火の粉の姿は、ぽつんとありました。
やがて円く燃え上がり、太陽になり、ノーモーションで刻々、刻々と大きくなるのです。
いまや眺めるべきものはなくなっていました。
あとには流れを忘れた黄色い時間があるだけです。
下方に目をやると、誰とは知らね、黒い行列が、音もなく、歩行のそぶりもなく、ぞろ、ぞろぞろ、ぞろぞろぞろ、と、静やかに移っていくではありませんか。
どなたかが声を掛けたら良いものを、どなたかが、、そう思ううち、出来るだけ大きく、すはやく、眩しく、声を畳み掛けていたのです。
どなたも気がつかれぬようでした。そのリズムは太陽のことも忘れているようでした。
夜です。
夜の太陽は静かに見ています。
おそらくこの街のことも初めて知ったのでしょう。
どんな表情も見留めることは出来ません。
階段を駆け下り、静かな地面に出ました。
黄色い時間の方へ、歩いていくのだと思います。
行列は誰も見ていません。
近くで見ると、その背丈はいやに大きいのでした。
ひょっとすると、黄色い時間に長く留まった人たちであるのやもしれません。
先人の背中を見送りつ、わたしは黙って歩きます。
それは憧れのためではないかもしれません。
それは希望のためではないかもしれません。
しかし、初めてその目で見る前から、わたしにはこの歩行が必要になると、どこかで思い当たっていたのでした。
あるいは意識がどろどろに溶けてあるのかもしれません。
太陽の光が思っていた以上に強く感じられます。
しかし、こうして歩いていくことは、なんと容易なことなのだろうと、いちいち感動して進むのです。
もうわたしは黄色い時間を眺めてはいません。
そのまま円く、大きく膨れ上がり、街の先の街、その街の先、遥か向こうをひとりで眺めつ、確かめつ、ゆくのです。
次はどこを燃えるのでしょう、
違う街で、すっかり燃されて、音もなく歩いてゆく姿が見えるでしょう、声を掛けてください、
聴くだけはしっかりと聴いていますから